国土交通相が表彰する本年度の地域公共交通優良団体に陣川あさひ町会と函館バス、函館市が選ばれた。道南の関係機関が受賞するのは初めて。3者の連携により陣川地区を走るコミュニティーバス「Jバス」の路線バス化を実現し、需要拡大に努めたことを評価したもので、今後は地域交通確保のモデルケースとして全国から注目を集めそうだ。
Jバスは、陣川地区と商業施設が集まる美原、昭和地区を結ぶ路線として、2012年から実証実験運行を開始。行政の補助金に頼らず、同町会が函館バスと月60万円の委託契約を結んで運営し、運行収入の不足分は手作りグッズの販売や広告収入で補った。
効率化と利用促進を図るため、アンケート調査でニーズを把握したほか、Jバスで市内の温泉に向かうイベントなども実施。一方、市はリーフレットと利用券の作成、印刷を支援し、函館バスはグッズ販売に協力した。
こうした3者の協力体制と町会の熱意が実を結び、函館バスが15年から、上陣川―昭和営業所間を結ぶ「9―J」系統の本格運行を開始。現在は1日3往復6便(土日曜・祝日は4便)運行している。
29日に、同省で行われた表彰式に出席した同町会の西川孝一会長は「市と函館バスの後押しがあったからこそ、住民の思いをかなえることができた」と感慨深げに話す。
函館バスによると、9―J系統の4~6月の利用者は前年同期比16%増の2450人で、他の既存系統を利用する陣川地区の住民も増加傾向だという。金岩祐也バス事業部次長は「路線バス化はゴールではなく、スタート。採算ベースにあとひと息のところまで来ており、町会と一体となってバス利用の機運を高めたい」と力を込める。
成功例を学ぼうと、既に全国から視察の申し込みがあるといい、市企画部は「今後も増加するのでは」とみている。
Jバス運営委員会代表として、立ち上げ時から尽力した同町会の上野山隆一副会長は「人口減少が進み、全国の公共交通機関が同じ悩みを抱えている。町会でも路線維持に向けてさらにアイデアを出していきたい」と話している。(山田大輔)