函館市の汐首漁港周辺の海域で18日、地元漁業関係者らによる豊漁祈願祭が行われ、大漁の神様として汐首地区で保管されている竜神像を漁船に乗せて隊列を組み沿岸を巡る「海上渡御」が二十数年ぶりに復活し、地域を盛り上げた。
同海域では近年、海流の変化や海水温上昇などでマグロやイカ、コンブの漁獲量が激減している。汐首竜神像奉賛会の中野正吾代表(45)が「豊漁や地域のためにも、誰かが先頭に立たなければ」と地域活性化も目指して祈願祭を計画し、2年前の4月18日、約20年ぶりに実現させた。その際、海上渡御も復活する予定だったが天候の都合でできず、昨年も同様の理由で実施できなかった。
この日は天候に恵まれ、始めに汐首地蔵堂に集まった計22人の関係者が、海上の安全や豊漁を願った。続いて竜神像を載せた「大一丸」のほか、大漁旗で装飾した漁船11隻が太鼓の合図で汐首漁港を出船。縦1列に並んで海上を一周(約5キロ)した。隊列の先頭を担った「海勝丸」の海津千代勝船長(70)は「久しぶりに海上渡御ができてうれしいし、昔を思い出す。活気があって見栄えもよく、やっぱりいいもんだ」と笑顔でかじを取った。
同地区の言い伝えによると、竜神像は1888年ごろに青森県大間町から同地区に訪れた僧侶が背負ってきたもので、当時から大漁の神様として町民に愛されているという。
中野代表は「昔は父親が海上渡御をやっているのを見ているだけだったが、実際に自分も参加できて感無量。天候に恵まれる限り、何年も続けて地域の伝統として次の世代にもつなげたい」と話していた。(柳元貴成)