函館の未来 司法に問う 大間原発訴訟が30日結審

 市民団体「大間原発訴訟の会」(竹田とし子代表)が国や電源開発を相手取り、大間原発(青森県大間町)の建設・運転の差し止めを求めている裁判は30日、函館地裁で結審する。2010年7月28日の提訴から7年、すべての審理を終えて来春に判決が言い渡される見通しだ。この結果は同会とは別に、函館市が建設凍結を求めて東京地裁に起こしている裁判にも影響を及ぼすのは必至。結審を前に、竹田代表(68)と原告弁護団取りまとめ役の森越清彦弁護士に改めて訴訟の意義などについて聞いた。(田中陽介、半澤孝平)

震災経て理解広がる 訴訟の会・竹田代表

 ――7年間を振り返って。
 先行きが分からず、結審までの7年は長かった。提訴は、福島の事故が起きる前の2010年。事故が起きたら大変だとして、大間原発は止めてほしい、とにかく原発は危険だということを一生懸命言おうと思っていた。東洋大の渡辺満久教授(変動地形学)と一緒に大間を歩き、活断層が見つかった。地震が起きたらひとたまりもなく、大間原発は「将来に生きる子どもたちに負の遺産。つくってはならない」と訴えてきた。
 ――原発への危機意識はいつから。
 1986年のチェルノブイリ事故がきっかけ。「函館・『下北』から核を考える会」ができて、94年に大巻忠一弁護士(故人)がストップ大間原発道南の会を立ち上げた時から活動に関わっている。大間への関心は2002年ごろに大間の漁師、熊谷あさ子さんとの出会いが大きく、豊かな海や自然環境、土などを守ろうと頑張る姿に共感した。
 ――東日本大震災発生を受けて…。
 1995年の阪神淡路大震災を受けて、神戸大の石橋克彦名誉教授(歴史地震)が「原発震災」の可能性を示していたので、原発が地震に影響しなければいいと思った。3・11の大きな揺れが起き始めたときは、裁判所5階の会議室で代理人の弁護士と裁判官と被告側の三者がスケジュールなどを話し合う進行協議が行われている最中だった。私は市内で電柱が揺れるのを見て、震源地がどこか不安だった。
 ――3・11後の市民らの変化は。
 震災前の勉強会の参加者は関心のある人が中心で、10人に満たないときもあった。震災があってからは関心を持ってくれる人が増え、「あなたの言うことは本当だったのね」「なんでこんな大事なことを、もっと早く教えてくれなかったの」と活動への理解が広がった。勉強会も100人、200人と増えて原告は2010年7月28日付の提訴では168人だったが、第2次で208人、第3次で286人になった。
 ――1次原告団の結成経緯は。
 署名段階での呼び掛けと個々のつながりが原点で、その中では首都圏や震災前だったが福島県民もいた。
 ――裁判については。
 裁判は日常的に関われるものではないが、初めて原告になり、相手方の質問や反応から学ぶことが少なくない。裁判所は学びの場であってほしい。私たちがどれだけ心配しているのかを代理人たちを通して、きちんと電源開発側に伝えたいと思って臨んでいる。
 ――東北の避難民の現状について。
 避難先で子どもたちが、いじめに遭ったり、国が帰還を迫るなどの対応に心が痛む。避難せざるを得ない状況に追い込まれている住民に対する対応ではなく、悔しい気持ちになる。大間でも事故が起きる可能性があることを考えれば、他人事ではない。
 ――結審で訴えたいことは。
 司法が「建設してもいい」となったら、私たちは行くところがなくなる。次世代に申し訳ない。先人が頑張って築いてくれた多くのものを放射能で無にしてしまうようなものしか後世に残せないとなれば、私たちが生きてきた全部が否定されるようなもの。函館の子どもたちの未来は司法の判断にかかっている。

提訴7年 危険性を立証 原告弁護団の森越清彦弁護士

 ――結審が目前です。
 東日本大震災前に提訴し、新設の原発に対する訴訟としては、初めての事件だった。震災以降は訴訟事件が増え、また裁判所全体の考えも原発の稼働なり、新設を容認していいのかという疑問が生まれて、今のままでいいのかという流れに変わった。函館地裁の審理に強い影響を与えてきたと思っている。
 これまで司法判断は、行政レベルでの判断を待っていたところがあったように思うが、行政判断と司法判断は直接関係しない。行政判断を待たずに、司法は司法としての独自の判断を示そうとする函館地裁の姿勢を原告側として積極的に受け止めている。
 原告団、原告弁護団としては、本件の訴訟で仮に「大間原発、建ててもいいよ」という判断が下されたなら、「司法が死んだ」としか考えられない。司法機関としての独自の判断を放棄したということだ。敗訴は、それほどあり得ない。30日は最終的に双方の主張と証拠を出し合う。
 訴訟を起こし、大間原発や周辺環境の危険性を指摘し、立証し尽くしたことで、原発が稼働に至っていない現実があることを振り返れば、この7年間は価値ある時間だった。
 ――争点については。
 一つは、東洋大の渡辺満久教授(変動地形学)が指摘するように、大間原発の北方沖に活断層があること。それを原子力規制委員会は受け止め、否定するだけの材料はあるのかと問いかけた。
 これに対し、(被告側は)「調査した。報告はまとまった」としながら、いまだに示されていない。予想外の揺れを想定して、基準地震動を決めなくてはいけないのに、しっかりとやっていないのではないかという争点がある。これに対して、被告側は答えられていない。行政レベルでも答えられていない。
 もう一つは、大間原発の建設の安全性が国際基準からほど遠いのではということ。原子力を新設、稼働していいのかについて、原告側は規制基準レベルで判断するが、それが安全性を担保するには至っていないと、原子力規制委員会の田中俊一委員長自身が以前の記者会見で発言している。今の規制基準が、国際的な基準に合ったものなのかどうかの関係で言うと、彼自身も自覚しているはずだ。
 ――事故発生時の避難計画について。
 事故の際、どのように住民が逃げるか、電源開発側は避難計画を立てていない。計画がなくても国内基準は良いからだ。ここに、「それは国や自治体のやることだから」とする第三者的な発想がある。日本は、規制基準自体に避難計画を求めていない。一方、国際基準では事故が起きた場合の避難計画が審査対象。国際的に照らして日本の規制基準の欠陥は明らかだ。
 ――日本の原発政策について。
 大間が稼働されると、使用済燃料から再利用できるウランやプルトニウムを化学的に取り出して作るMOX燃料を全炉心に入れられるフルMOX炉を持つ世界初の商業炉となる。(被告側は)データ上では大丈夫で10年かけて安全に進めると主張するが、それなら実験炉で安全性を確認してから進めるべきだ。大間を実験台にすべきではない。人間のやることに絶対安全はあり得ず、危険がある。たとえ原発政策に賛同して推進する住民も大間原発については怒りを示さなければならない。

◇実質審理「証人尋問」の主な内容

テロも脅威の一つ ■第1回(2016年9月23日)
 原告側証人で、福島第一原発などに勤務経験のある原子力コンサルタントの佐藤暁氏が、世界初のフルMOX商業炉となる大間原発について「同様のものを建設申請すると、米国では100%許可されない。ヨーロッパではますます無理だと思う。なぜ日本で旧式の原発が建設されようとしているのか。福島の事故は世界中にインパクトを与えたが、教訓に生かされていない。地震、津波などとともにテロも脅威の一つだ」と述べた。

MOX燃料 十分安全 ■第2回(同年9月30日)
 被告側として、東北大の若林利男名誉教授が証言。旧動力炉・核燃料開発事業団で長年、新型転換炉や高速炉の研究開発と、これに使用するMOX燃料の製造技術などの研究開発に携わったほか、島根発電所3号機、大間原発の安全審査に関わった専門家の立場で「MOX燃料やMOX燃料装荷炉心は、いろいろな試験で特性が十分確認されている。原子炉はウラン燃料で培われた技術を土台にしており、MOX燃料の安全性については十分であると考えている」と安全性を強調。

電源開発 対策不十分 ■第3回(同年11月10日)
 原告側証人で、原子力コンサルタントの佐藤暁氏が原発安全基準について「各国の電力事情によっては緩い基準でも運転しなければならない場合もあるが、日本は福島第一原発の事故が起きた国として、世界最高水準の安全性を確保する責任がある」。原発の運転経験がない電源開発の安全対策に関し「長い時間をかけて勉強を積み重ね、努力していることは認めるが、原発では想定外の事故が起きる可能性があるので、対策としては十分とはいえない」とした。

安全性に問題ない ■第4回(同年11月11日)
 被告側証人で東北大の若林利男名誉教授が「安全性には問題がない」。原告側は「5~10年かけて燃料を入れるのは何らかの不安があるからなのでは」と指摘すると、若林氏は「段階的にやっていくもので、安全性については特に問題ない」と述べた。

活断層 非常に不安 ■第5回(2017年1月10日)
 原告側証人として地理学者、東洋大教授の渡辺満久氏が「原発はどちらかと言えば賛成の立場だが、(立地条件などから)大間は安全ではなく、やめたほうがいい」。大間の地形については、活断層があることで広く知られる四国・室戸岬に似ているとし「将来活動する可能性のある活断層があり、非常に不安。経験則で7・5あるいは、もっと大きな地震が原発直下でもありえる」と指摘した。
 被告側は電源開発で技術安全面などに携わる男性社員2人が「耐震性などの構造上に問題はなく、かなりの安全性が備わっている」とし、福島第一原発事故に触れて「津波に対しても一層手厚く安全対策を図っている」とした。

通報「今後協議」 ■第6回(同年1月11日)
 被告側として、電源開発で安全対策に取り組む男性社員が、大間原発で万一事故が起きた際の対応について「立地県への通報は決まっているが、函館への通報は今後の協議」と述べた。福島第一原発事故に触れ「そういう事故に至らないよう、さらなる対策に重点を置いている」とし、国際原子力機関(IAEA)の安全基準でも「十分満足している」と安全面を強調。建築技術系の別の男性社員は活断層の存在を否定し「会社として念入りに調査した結果、活断層はなかった」と従来の主張を繰り返した。

活断層の存在否定 ■第7回(2017年2月21日)
 被告側の証人として、地質学者、首都大学東京名誉教授の山崎晴雄氏が大間原発建設付近に「活断層は認められない」と証言。下北半島の地形は長期間全体的に自然に隆起したとし、原告側の証人が危険性を指摘していた活断層の存在を否定。被告側の調査などについて「問題ない。間違いなく正しいデータが示されている。活断層を調べるには、一つだけの情報だけではなくいろいろなものを総合することが大事」。電源開発の男性職員も「銭亀火山が将来活動する可能性は少ない。気象庁と函館市も将来の活動性について肯定しているとは思わない」とした。

新規制基準に疑問 ■第8回(同年2月22日)
 被告側の証人で、地質学者の山崎晴雄氏(首都大学東京名誉教授)が原発の新規制基準について「証明不可能なことを要求している」と被告側に不利ともとらえられる発言で異例の展開。山崎氏は「(東日本大震災が起きた)3・11後の新規制基準は、ある意味科学的ではない。活断層がないと思われていたところで、その後の調査で活断層があったことも、たくさんではないがある」と述べた。

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