函館の画家、瀬戸英樹さんの近作を中心に紹介する道立函館美術館の特別展「瀬戸英樹展失われゆくものへのオマージュ」が14日、同館で開幕した緑を中心とした色調で、細密な描写で描いた道南の風景など76点を展示している来年1月24日まで
瀬戸さんは1940年、満州生まれ戦後に両親の古里である函館に引き上げた18歳のころから岩船修三氏に師事し本格的に油彩を学んだ当初は人形などをモチーフに不安な雰囲気を醸し出す幻想的な作風だったが、74~76年などにドイツへ渡り、ヨーロッパの古典的な作品や広大な風景との触れ合いを機に、現実の事物を強く意識して内面性や批判精神を重ねる作風となる一方、道南地方の農村や漁村を主題に、細密な描写による作品を生み出してきた
新作「海峡からの潮風(かぜ)」は、2013年から取り組み始めた函館市の住吉漁港から恵山にかけての海岸線を描く連作長年描いてきたスケッチから選び、「造船所」「昆布干し場」「陸(おか)に上がった船」「老朽船」など17点で構成キャンバスが並ぶと長さは30メートルを超える大作活気に満ち、平和だったころの浜の様子は郷愁を感じさせている
1991年の「番屋、廃船…漁村をえがく」は約10メートルのパノラマ冬の強風が吹き付ける江差の砂浜に小屋や漁船などを配した2001年発表の「セピア色の画帳」は、0~30号のキャンパスに、明治から昭和初期に函館周辺に建てられたモダンな建築物の40点を紹介写実的ながら幻想的な雰囲気が漂っている
瀬戸さんは「美術館で作品を発表するのは画家誰しもの夢であり、60年間描いてきて実現でき感謝でいっぱいアトリエに眠っていた作品が皆さんに見てもらえることを喜んでいると思う道南の風景を楽しんでもらえれば」と話し、来場を呼び掛けている
観覧料は一般610円、高校大学生410円、小中学生200円休館日は月曜(23日、1月11日は開館)および、24日、12月29日~1月3日、1月12日問い合わせは同館(?0138・56・6311)へ(山崎純一)