函館市は景観に配慮した優れた建築物や活動団体を表彰する第20回函館市都市景観賞を発表した明治期の建物を再生した「港の庵」(大町8)、伝統様式を現代風にアレンジした新築物件「ochikochi」(元町7)、書店を中心とした複合商業施設「函館蔦屋書店」(石川町85)の3件の建築物と、活動開始10年となったNPO法人はこだて街なかプロジェクト(山内一男理事長)が選ばれた
同賞は1995年度に創設で、昨年度、選考スケジュールを見直したため、2年ぶりの選考市民から延べ78件の応募があり、5年以内に新・改築などの条件を満たした33件を選考委員会(委員長・岡本誠公立はこだて未来大学教授)で審査した8日に市役所で表彰式が行われ、工藤寿樹市長から各建築物の所有者、占有者、設計者、施工者、山内理事長に賞状と記念品が贈られた
「港の庵」は1902(明治35)年建築の木造2階建て瓦ぶきの切り妻屋根、軒蛇腹など伝統的な建築様式を継承し、しっくいのレリーフや鋳鉄製の柱などは当時のものを残し、昨年7月に復元を終えた占有者で元町マリンハウスの清水ゑみ子代表取締役は「函館の財産として大切に若い人につなげていきたい」と話した
「ochikochi」は昨年5月、観光客が多く行き交う港ケ丘通り沿いに新築函館らしい歴史的建築様式を意識し、景観に配慮したデザインの建物となった設計者のミズタニテツヒロ建築設計の水谷哲大代表は「歴史ある町並みの中で設計者として何ができるのかと、うれしさとプレッシャーがあった過去から未来につなぎ、時間の移ろいを感じられる設計とした」と話した
「函館蔦屋書店」は2013年12月にオープン郊外型の大型店でありながら、圧迫感がなく、木目調塗装の外壁など周辺住宅街との調和を評価梓設計の一級建築士田村慶太さんは「(外壁の色は)函館の持つ色の変化を用いて優しい外観となった市民の活動や営みといった無形のものが広がらないかを考えたプロジェクト」と話した
「はこだて街なかプロジェクト」は主に西部地区で空き家や空き地の利活用に関する取り組み、屋外広告物の調査など、歴史的な景観維持保全の活動を展開山内理事長は「活動を始めたころ、まちづくりに民間が関わるケースが少なかったが、行動と意志を伝えることで地域が変わった地道に続けて良かった」と話した
工藤市長は関係者の建物への思いや活動を評価し、「市民や観光客に心の底から魅力のある街だと思ってもらえるよう、努力していく官民挙げて景観を守る方法を考えていきたい」と述べた(今井正一)