臥牛山2月28日・嫌いな自己責任
どうしてか、厳密に説明できないが、嫌いな言葉がある。「生きざま」「自分探し」「自己責任」などなど。ものを書くとき、極力避けるようにしてきた▼「弱者に責任をおしつける保身と欺瞞(ぎまん)の言語。それが『自己責任』」。精神科医の和田秀樹さんは「この国の冷たさの正体 一億総『自己責任』時代を生き抜く」(朝日新書)でこう言い切る▼生活保護受給者へのバッシング、ギャンブルや薬物などの依存症。そうした人たちが増えている現状を示しながら、現在の日本が他の国と比べ、経済的弱者や競争社会からの脱落者に対し、異常に冷たいことを指摘する▼ついこの間、函館で特殊詐欺まがいの窃盗事件が相次いだ。警察官を名乗る電話を受けた80代の高齢者が、事件捜査への協力と思い、現金をそれぞれ玄関に、郵便受けに置き、持ち去られた。公の言葉を素直に信じる、情報に疎い弱者を食いものにする事案があふれている▼自己責任とは言い切れない問題が現代社会によくある中で、和田さんは「情けは人のためならず」を提唱する。「人間は…『迷惑』の塊だと気づくことが大事」と。「迷惑をかけた」と鬼の首を取ったように誰かを糾弾することは避けようと思う。(Z)