函館市漁協の下部組織、函館サーモン部会が函館漁港内で養殖するトラウトサーモンの今年度水揚げが17日、行われた。この日は丸々と成長した約280匹が捕獲され、水産会社で加工された後、市内のスーパーやすし店などに出荷された。18日には「函館サーモン」のブランド名で店頭に並ぶ予定。
同漁協では天然魚の不漁により漁業者を取り巻く環境が厳しさを増す中、育てる漁業に活路を見出そうと2021年にトラウトサーモンの海面養殖に着手。同11月に400匹の海面養殖をスタートし、22年6月に200匹を初水揚げ。「脂の乗りが上品でおいしい」と市民や観光客から好評を得た。
2年目となる昨年11月には前年の10倍以上となる約5000匹を生けすに放ち、約9割の4500匹が平均3・7キロ、最大5キロまで成長した。今季の冬は前半は寒波、後半は高温が続くなど厳しい育条件だったが、函館港内という水温の変化が少ない養殖場所の中で順調に成長したという。
同部会リーダーの松川雅樹さんは「餌を変更するなどした結果、より品質の高い成魚に育った。近年、サーモン類の養殖を行う地域は増えたが、魚のチェックを毎日欠かさず手をかけているので、他地域に負けないおいしさと自負している。昨年は全体の収量が少なく消費者にご迷惑を掛けたが、今年は多くの市民や観光客に函館サーモンを味わってもらえる」と話す。今後は7月まで毎週火曜日に300匹程度水揚げし、木曜日に店頭に並ぶ見通し。
同部会は、来年度は1万1000匹まで養殖数を増やし、本格的な事業化への研究を進めていく。松川さんは「函館山の麓で養殖される質の高いサーモンとして、スルメイカと並ぶ函館を代表する海産物を目指していきたい」と意気込んでいる。(小川俊之)