小型船スルメイカ釣り漁の採捕停止命令の継続が決まったことを受け、函館の水産関係者からは「漁再開を期待していたのに」と落胆と憤りの声が上がった。市内では活イカの流通がなくなり、飲食店やホテルなどに大きな影響が出ている。スルメイカの漁獲可能量(TAC)制度運用の見直しを求める声も根強い。
函館市中島廉売内の紺地鮮魚の紺地慶一社長(63)は「函館は今捕れているのだから、TACは柔軟な運用を図るべきではないか。捕った者勝ちの制度はおかしい」と強調。「イカ販売には大打撃。活イカを使う飲食店はこれからどうすればいいのか。函館の食文化がなくなってしまう」と危機感を募らせる。
函館自由市場協同組合理事長で、前鮮魚店の前直幸社長(62)は、停止継続を受け「がっかり。残念で泣けてくる」と肩を落とす。「もしかしたら漁再開になるのではないかと期待し、活イカを買い付けに行けるよう、準備を整えていた」と明かす。現行の漁獲枠について「おかしい。北海道にとって不利だ。道内で捕れ、もう上限だから止めてというのなら分かるが、納得がいかない」と制度の問題を指摘する。
イカ専門店「富田鮮魚店」の富田和子社長(75)は「(定置網で捕れたイカを)入荷できた分は売るけど、ないと言われたら我慢するしかない」と失意の表情を浮かべる。「あすがどうなるか分からない。全くイカがない可能性もある」と懸念。客足に関しては「利用客の足は遠ざかってしまった。イカがないと思っているのか、価格が高いと思っているのか、買う量が減っている」と商売への影響を危惧する。
加工業者も影響を注視する。イカ塩辛の老舗メーカー小田島水産食品(弁天町)の小田島隆社長(73)は「スルメイカは昨年も不漁だったので、他のイカを手当てしており、すぐに操業停止になるような状況ではない」と説明。ただ、釣りイカがないため、定置網で水揚げしたイカ価格が高騰しており「来年以降、魚価高によってじわじわと影響が出るのでは」と気をもむ。
小型スルメイカ釣り漁は漁獲枠超過で、水産庁が今月1日から採捕停止命令を全国に発令。5日の水産庁の審議会で、小型船は4900トンを5757トンに増枠したが、10月24日現在で5896トンに達しており、禁漁措置の解除は認められなかった。スルメイカ禁漁は来年3月末まで続く見通し。(山崎大和、竹田 亘)



