道が、世界遺産の価値や魅力を国内外に分かりやすく伝え、保全活動や調査研究の拠点にもなる施設を「北海道・北東北の縄文遺跡群」の構成資産を持つ函館市に設置する方向で検討していることが分かった。函館市などが誘致を要望していた世界遺産センターに相当するもので、道は今年12月に方針を決定する。
17日の道議会環境生活委員会で報告した「道での縄文世界遺産の拠点形成方針」(素案)に「道南エリア(函館市)に新たな拠点を設置し、拠点機能を強化する」と盛り込んだ。
新たな拠点は情報発信や調査・研究、人材育成などを一元的に行う施設で、道内6遺跡がある4市町のうち、唯一函館が拠点誘致の活動を行っていた。
誘致をめぐっては、2022年9月には、函館商工会議所など道南の経済6団体が道に要望書を提出。23年7月には、道に対し市と市議会が合同要望し、同8月には市と函館商工会議所、道南縄文文化推進協議会の3者が札幌を訪れ、大泉潤市長らが鈴木直道知事に要望書を手渡した。
素案には、新たな拠点設置のほか▽道内資産が所在する市町と一体となって遺産の価値・魅力を発信▽誘客や周遊を促す道南の出発点として青函交流に取り組んでいる函館市と連携しながら普及機能を発揮し、道央エリアへの周遊を促進▽道内資産と一体となった世界遺産教育を通じ、保存と活用を担う人材を育成するなど、道南エリアでの地域活動を支援―を明記した。
道は、道央エリアでも道庁内にある道縄文世界遺産推進室を中心に拠点機能を強化するとしており、道南と道央2カ所に拠点機能を設ける見通し。
道内の拠点施設開設は、21年3月に道が縄文世界遺産の活用の在り方、23年3月に縄文世界遺産の拠点機能の在り方をそれぞれ策定し、23年度に遺跡を有する市町と意見交換を行った。道は今年11月、拠点形成方針案を道議会に報告し、12月に成案化する。
市教委文化財課は「これまでの要望活動の成果で第一歩と捉えている。実現すれば喜ばしい」としている。(山崎大和)