函館空襲で沈められた旧日本海軍の駆逐艦の慰霊祭で配られた記念品「駆逐艦橘 安航祈念カレー」の販売が始まった。毎年、慰霊祭を行っている函館護国神社(大橋幸生宮司)が発案、函館の老舗レストラン五島軒(若山豪社長)が全面協力し実現した。売り上げの一部は、慰霊碑の修復、整備などに充てられる。
太平洋戦争末期の1945年7月、米空母群の艦載機による攻撃が函館であった。その時、本州と北海道をつなぐ石炭輸送の大動脈だった青函連絡船など民間船舶を守ろうと防戦したのが橘だった。しかし、圧倒的な戦力の違いにより、葛登支岬の沖合で沈んだ。
乗組員280人のうち140人が戦死。生存者の多くは北斗市(旧上磯町)茂辺地地区の住民が救助した。同神社の境内には91年に「橘鎮魂之碑」が建立され、毎年7月に慰霊祭が執り行われている。
安航祈念カレーは、戦後80年を迎え、「何か記念になるものを遺族に手渡したい」と同神社が提案したのがきっかけだ。
函館を代表する老舗レストラン五島軒が全面的に協力した。人気イラストレーターのくーろくろ氏がデザインを担当した。遺族に配ったところ、「函館を思い出す」「どこで売っているのか」など問い合わせがあり、味も好評だった。同神社と遺族、五島軒が話し合い販売が決まった。
安航祈念カレーは中辛で内容量420グラムの2人前。価格は3024円(税込み)。五島軒本店、十字街店の直接販売のほか、通信販売もある。
若山社長はレストランの味そのものとし「いつでも、どこでも函館を感じることができるように、との思いで作り上げました」と話した。
収益の一部は、慰霊碑の保全に使われる。大橋宮司は「戦後80年がたち徐々に戦争が風化している。今回の販売などが次の世代に伝わるきっかけとなってほしい」と期待した。(横山蔵利)



