函館新聞デジタルで2023年6月から連載している「バトンタッチ~事業承継を考える」。事業承継協会北海道支部のメンバーが、会社の経営権を後継者に引き継ぐ事業承継について、役立つ知識や課題、進め方などを解説している。同支部理事で、道南唯一の事業承継士として活動する山本孝宏さん(39)に話を聞いた。
――事業承継が近年盛んに叫ばれているのは、どのような理由からでしょうか。
全国で中小企業は約350万社あると言われていますが、超高齢社会に突入する2025年には、この350万社のうち約半数の事業者が70歳以上になり、かつ、この半数が後継者不在による廃業、倒産の危機に直面すると予測されているからです。事業承継の中に、親族内承継、従業員承継、M&A(企業・事業の合併・買収)という3つの方法があると考えてもらえればと思います。
――事業承継士はどのような仕事をするのですか。
経営者が事業承継を考えた時に、最初の相談のほとんどが「何から手を付けたらいいのかが分からない」というものです。企業がどういう承継をしたいかを聞き出すのが事業承継士としての仕事のスタートです。まずは現在の経営者の思いを聞いて、後継者の希望も聞きながら進めていきます。後継者がいないけど廃業するのはもったいないという場合にはM&Aで事業と従業員の雇用を守るという手法を取ることもありますが、基本は親族内承継、従業員承継をメインに支援しています。
――連載を始めてみて、反応はいかがですか。
函館新聞デジタルに連載を持ったことで、「記事を見たよ」とか、「学びになったよ」といった声を頻繁に聞くようになりました。事業承継で悩んでいる人に、こういう協会があり、専門の人がいることを知っていただけると思います。事業承継に対する関心は高く、情報発信することで地元のためにもなっていると考えています。
――どんなところに気を付けて執筆していますか。
毎回が同じ内容とならないよう気を配るとともに、インターネットで調べれば分かる情報ではなくて、私たちが現場で見たことや実体験に基づく話を載せるように意識しています。
――今後の抱負を。
事業承継ができずに廃業するという選択を阻止するとともに、地元や地域のために1社でも多く企業を守り、理念を次につなげる仕事をしたいと思います。経営者と後継者の橋渡し役として活躍できるように頑張りたいです。
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やまもと・たかひろ 1985年函館市生まれ。函館北高卒。市内の税理士事務所勤務を経て、2022年10月に株式会社DOSANKOAgriConsulting(ドサンコアグリコンサルティング)を設立。農業に特化したコンサルティング業務を行うとともに、一般社団法人事業承継協会が認定する事業承継士としても活動する。