【福島】道南虫の会(事務局・函館)は24日、本州以南に生息するキタキチョウを道内で30年ぶりに確認したと発表した。越冬個体の道内での採集は初めてで、会員の安井徹さん(69)が9日午前11時ごろ、福島町内で雄1匹を捕獲した。同会は、本州から風に乗って迷い込んだものとみているが、生息範囲が青森県内にまで北上している種類で、将来的に道内で定着する可能性も秘めている。
キタキチョウは東北以南ではよく見かける種類だが、約10年前に発行された図鑑でも東北北部での確認はまれとされていた。同会が把握する道内での確認例は、直近では1990年9月25日に奥尻町米岡で1匹確認した事例が最後。それ以前は函館(59年)、八雲(61年)、知内(73年)、乙部(79年)での4例計12匹があり、今回が30年ぶり6例目となった。
安井さんが捕まえた個体は羽を広げた大きさが約4センチ。夏生まれの個体は前羽の先端が黒くなるが、捕獲したのは薄らと色づいている程度で、羽の裏側に茶色い斑点があることから、秋に生まれて越冬した個体だといい、性班から雄であることが分かった。
同会では、昨年秋に松前町内で、本州で生息範囲が北上している「ヤマトシジミ」を確認し、越冬や道内での定着の可能性を確認するため、今春以降も調査を続けている。9日は同会の対馬誠さん(63)と松前町内での活動後に立ち寄った福島町で、思いがけない発見につながった。
安井さんは35年の活動歴でもトップクラスの成果だとし「あまり高くない所を飛んでいて、黄色く、明らかに(モンキチョウとは)違うと思い、50メートルほど追い掛けた。捕ったことがないのでびっくりしました」と喜ぶ。
10日以降も数回調査に出掛けているがこれまでにヤマトシジミも含め、キチョウは確認できていない。ハギ類やネムノキ、ニセアカシアといったマメ科の植物を好み、道南でも繁殖できる環境はあり、将来的には道内に定着する可能性があるとみている。(今井正一)