噴火湾産の魚介を無駄なく活用
地産地消を掲げた商品開発
地域と共に歩む創業74年の水産加工会社
鹿部の「株式会社イリエ船橋商店」は、噴火湾の豊かな漁場で水揚げされる新鮮な魚介を原材料にした水産加工品の製造、販売会社。1952年に創業者の船橋第次郎さんが個人事業として卸売を専門に、折箱に詰めた生鮮ウニを東京築地市場へ空路で出荷したのが始まり。代を重ねる中で3代目の吉右衛門さんが、ウニ漁が休みになる冬季に新たな仕事を生み出したいと、前浜で豊漁が続いたスケトウダラの魚卵を原料に、添加物を減らし、天然調味料にこだわったタラコの製造を75年に開始した。92年に「有限会社イリエ船橋水産」を設立し、辛子明太子の製造にも着手。時代が進むにつれ、安価な海外産魚卵が市場に入るようになると、国産魚卵が値崩れし苦境に立たされた。打開策として、2010年に販売部門を立ち上げ小売業に着手。商号を変更して現社名となった。現在は娘の井上千春さんが4代目を継ぎ、営業部長兼工場長で3代目の妻・敦子さん、販売部長の鈴木昌志さんが脇を固め事業をけん引。地産地消にこだわり、食べる人の健康を考え、添加物を極力抑えた製品作りは全国でも高評価を受け、中でも「海峡はちみつ明太子」は全国観光土産品連盟推奨品に、道立工業技術センターや町製品開発研究会と共同開発した干物「軽石干し」は、北のハイグレード食品や国土交通省全国地域づくり推進協議会会長賞などを受賞し、品質の良さは折り紙付きだ。
ホヤを洋風おつまみに亡き漁師の思い継ぐ商品
栄養価の高いホヤを使った「おつまみホヤ」は、昨年完成したばかりの一品。コンフィ仕立てで食感がよく、今年、北のハイグレード食品に選定された。商品化へのきっかけは、2023年、東京電力福島第一原発からのALPS処理水の海洋放出を受け、多くの国で日本産水産物の輸入規制が実施されたこと。鹿部で唯一ホヤを養殖し、主に韓国や中国に輸出していた漁師の故・新田邦雄さんもその影響を受け、行き場を失った大量のホヤの活用法を鈴木部長に相談。北斗にあるレストラン「Pokke dish」オーナーシェフ・齊藤亘胤さんから「洋風のおつまみにしては」というアドバイスを受け、開発をスタートさせた。開けたらすぐに食べられる常温保存に主眼を置いて研究を重ね、道立工業技術センターにも協力を仰ぎ商品化。製造はすべて手作業で、旬に仕入れて原料加工し冷凍保存していたホヤのむき身と、旨み成分たっぷりのホヤ水を一緒に煮込み独自の風味を残す。水分を飛ばした身を食べやすいサイズにカットし、ピンセットで丁寧にびんに詰めて、コメ油で満たす。スチームコンベクションを用いた脱気と殺菌作業を経て、無菌条件をクリア。調味料は素材の味を生かす塩のみ。プレーンとサクラチップで燻製をかけたスモークの2種類を用意し、アンケート調査でも評判は上々だ。直売所ほか道の駅「しかべ間歇泉公園」で購入できる。「昨年1月に亡くなった新田さんの思いがこもった商品。鹿部のホヤのおいしさを広く知ってほしい」と敦子さん。今後も前浜の魚介を無駄なく活用できる商品を生み出したいと意欲を燃やしている。
株式会社 イリエ船橋商店
鹿部町鹿部68
☎01372‐7‐2010
9:00~17:00
日曜定休 P有り
ハコラク2026年5月号掲載




