【木古内】町本町でやきそば店「駅前飯店 急行」を長年営み、「急行のおばさん」として町内外から親しまれていた垣内キミさん(85)が16日、心不全で急逝した。釧路管内浜中町出身。葬儀は20日、町本町の最勝寺で行われた。
夫の幸四郎さん(故人)とともに名代やきそばを考案し、1956年に木古内駅前に「急行」を開店。地元の人々や旅行者らに木古内の味として長年親しまれていた。駅前の区画整理に伴い、体調が万全でなかったこともあって廃業を考えたが、閉店を惜しむ多くの人々の声を受けて、2013年に木古内警察署前の現在地に移転し、営業を続けていた。
心臓に持病を抱えながら最後の日まで厨房に立ち、鍋を振り続けてきた垣内さん。東京に住んでいた娘の夫が後継者となる予定だったが、垣内さんの持っていた味への強いこだわりを満足させることはできなかった。
駅前で東出酒店を営む東出邦夫さんは「ものをハッキリと言う人で、垣内さんの存在自体が町の名物だった」と故人の人柄を偲ぶ。駅前で文房具店「モーリ」を営む毛利敬子さんは「子どもたちは、帰郷するときは、いつも『急行のおばさん』のやきそばを楽しみにしていた」と惜しむ。「アメリカ在住の次男は、先月仕事で日本を訪れた時、やきそばを食べるために木古内に立ち寄った。次男は『また来年来るから』とかけた言葉が最後になってしまった、と残念がっていた。ほんの数日前まで元気だったのに」と悼む。(神部 造)