道が本年度創設した漫画コンテスト「第1回北のまんが大賞」で、函館市のイラストレーター村瀬修さん(65)の作品「北の縄文」が準大賞に輝いた。成績不振の営業マンが縄文遺跡の発掘に関わっていくストーリー。会社員時代の経験や考古学への関心を反映させ、道内唯一の国宝「中空土偶」(著保内野遺跡出土)にそっくりな土偶も登場するなど、丁寧な描写が評価された。
北海道の魅力発信や漫画家育成を目的に、昨年7~9月に作品を募集し、全国から55作品が集まった。漫画家いがらしゆみこさんら審査員による選考などで、大賞の道知事賞と準大賞の札幌市長賞など計6点の受賞が1月に決まった。特別賞では木古内町の安齋萌さん(23)の作品が選ばれ、大賞と村瀬さんの作品は3月にホームページ上で公開を予定する。
村瀬さんは帯広出身で、高校卒業後、菓子メーカーに就職。道内各地を転勤で歩き、函館で勤務していた50歳の時に早期退職した。以来、漫画や絵本などの創作活動を本格的に始め、数多くのコンテストで入賞経験がある。
今回の受賞作の主人公は成績不振に悩む菓子メーカーの営業員で、遺跡発掘現場との出合いから、仕事にも大きな転機が訪れる-といった話を22ページにまとめた。「素朴で丁寧な描写と暖かみのある作風」と、道と北東北3県が世界遺産登録を目指す縄文をテーマにしたことも評価された。
村瀬さんは帯広で過ごした小学生の時に縄文土器の破片を見つけたのがきっかけで考古学への関心を持ち続け、「営業員時代も遺跡発掘現場近くを通ると気になってよく見学した。道内各地で遺跡を見てきた」と話す。今回、中空土偶の作画のために市縄文文化交流センターを訪れ、土偶の細密な文様や技術の高さに改めて感心したという。
村瀬さんは「楽しかった体験ばかりが元になっているので、描いていて面白かった。今後も昭和のにおいを感じるような人情味のある作品を手掛けていきたい」と話している。(今井正一)