脳血管内治療について
脳の手術には主に、頭蓋骨を開けて行う「開頭術」と、血管の中にカテーテルという細い管を通して治療する「血管内治療」があります。血管内治療の最大の利点の1つは「頭を開けない」治療である点です。その分、患者さんの負担は軽く、治療後の回復も早いです。もちろん、全ての脳の病気が血管内治療で治せるわけではなく、病状に応じて開頭術と血管内治療を使い分けています。
最近、特に注目されているのは脳梗塞の治療です。脳梗塞は、血のかたまり(血栓)によって脳の血管がつまり、脳組織が死んでしまう病気ですが、そうなる前に血流を回復させれば、死にかけた脳組織がまた復活します。これまではt-PAという薬で血栓を溶かす治療があったものの、大きい血栓の場合には治療が難しかったのですが、カテーテルを利用した血栓回収療法が行われるようになり、治療が大きく変わりました。これはカテーテルから血栓を掃除機のように吸い込んだり、ステント(網目状の金属)を血栓のある部分に広げて投網のように絡め取ったりすることで、詰まった血管を開通させる治療法です。発症から6時間以内(状況によっては24時間以内)で条件が揃えば、この治療が可能であり、まだ広範囲の脳梗塞が出ていない状態であれば、症状の劇的な改善が期待できます。時間が経ってしまってからでは遅いので、半身の手足が動かない、言葉が出ないなど脳梗塞を疑う症状が出現した場合には、速やかに脳神経外科へご相談ください。
脳血管内治療ではそのほか、動脈瘤の中にコイルというやわらかい針金のような金属を詰めて治療するコイル塞栓術や、首の狭くなった血管に留置型のステントを置くことで血管を広げる頚動脈ステント留置術などがあります。血管内治療の分野は近年発展が目覚ましく、さまざまな機器の登場により次々と新たな治療が可能となってきています。今後さらなる進歩が期待できる治療です。
(ハコラク 2021年2月号掲載)
略歴
平成16年、北海道大学医学部卒業。市立旭川病院、北海道大学病院、函館中央病院、帯広厚生病院、苫小牧市立病院、市立千歳市民病院、釧路労災病院勤務を経て、平成25年から函館中央病院脳神経外科に勤務し医長に、平成30年、科長に就任。日本脳神経外科学会脳神経外科専門医、日本脳神経血管内治療学会脳血管内治療専門医。
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