ステロイド外用剤こぼれ話
いわゆるステロイド外用剤は昭和25年頃より一般に使用されたようです。それまで非常に治り難かった皮膚疾患が劇的に治るようになり、当時の患者さんや医師にとってはまさに福音だったのです。価格も今と比べ物にならず高価で今の貨幣価値で言うと1本1万円以上したとのことです。 それまでの皮膚科の軟膏のイメージは老医師が壺に入れ、自分で調合した軟膏をにぎにぎしく処方するとのイメージでしたが、ステロイド外用剤の登場により、そのイメージは一掃されました。
さて、ここでステロイド軟膏についての都市伝説?について書きます。誰が言い出したか知りませんが、「ステロイド軟膏を塗布して日光に当たると色素沈着が起こる」ということです。これは全くの嘘で、正確には皮膚炎などに軟膏を外用して軽快すれば、一時的に色素沈着を起こすものなので、色素沈着は皮膚炎が治っていく1つの過程と考えるべきなのです。
しかし、ステロイド外用剤とて万能ではありません。誤った使用にて副作用を起こすこともあります。よくステロイド外用剤は怖いと訴える患者さんがいますが、正しい知識を持った皮膚科医に管理してもらえば、危険は非常に少なく有益な薬剤と言えるでしょう。決して中途半端な知識で薬剤を評価してはいけません。それが元で危険な民間療法に陥り心身ともに大きなダメージを負うことが度々あります。私もそれらの症例をたくさん経験いたしました。実に悲惨な結果となった事例もあります。さらに、皮膚の病気にはステロイド外用剤を使用してはいけない疾患も多々あり、何か皮疹が出現した時には、皮膚科医の受診をおすすめいたします。
(ハコラク 2018年12月号掲載)
略歴
昭和52年、北里大学医学部卒業、北里大学病院、自治医科大学附属病院、函館五稜郭病院勤務を経て、平成27年、アルファ皮膚科クリニックを開院。
アルファ皮膚科クリニック
函館市本通1-7-22 メディカルプレイス2F ☎0138-33-7300
■診療科目/皮膚科
■診療時間/月・火・木・金9:00~12:00、14:00~18:00
土9:00~11:30
■休診日/水・日曜、祝日