生乳の生産基地・北海道から、付加価値ある商品を届ける
道南の新鮮な生乳を生かし全国有数の食品製造会社に
函館で生まれ育った乳製品製造会社「北海道乳業」の起源は、1931年、初代・田島久三社長が立ち上げた海産物卸問屋。当時、サケの塩引きやくん製などの食品製造業へと事業を拡大する中、砂糖の統制が行われていた戦後間もなく菓子製造に乗り出し、1949年、「北海道乳業」の前身となる「田島産業」を設立。函館市宝来町にアイスクリーム製造工場を新設したのを皮切りに、メイン商品が乳製品へと移り変わった。北海道の酪農発祥地である道南産を主体とした道産生乳を、函館で殺菌・パック詰めする牛乳は、渡島・桧山のほぼ全ての小中学校の給食で飲用され、本州に最も近い道南の地の利を生かす独自の流通システムで、関東や関西にも新鮮で良質な牛乳を届けている。また、バターやチーズなど、自慢の生乳を生かした乳製品を展開し、1994年に発売した「フルーツサラダヨーグルト」は、累計3億個以上を売り上げるロングセラー商品となった。現在、国産生乳の買い入れ量は国内6位、大手メーカー各社の飲料や菓子の原料にも使用される練乳はトップシェアを誇っている。
手間暇かける手詰め製法が確固たるブランドを育む
プリッとしたミカンにジューシーなブドウ、大きくカットされた白桃とパインアップル。風味豊かな生乳で作るクリーミーなヨーグルトに、4種類の大粒果実を合わせた「フルーツサラダヨーグルト」は、1990年代に始まった乳製品の貿易自由化に対応するべく、社内一丸となって開発した商品。同社会長がハワイのホテルで口にしたフルーツカクテルのヨーグルト添えをヒントに、果物が主役の贅沢な味わいを目指して試行錯誤。大きな果実をそのままに味わえるよう辿り着いたのが、果肉一粒一粒を手作業で充填する、まさに手作り仕立ての製法で、この工程の機械化が難しく手間暇がかかることから、ほかでは真似できない最大の強みとなった。「この作り方だからこそできる発展の可能性がまだまだある」と語る田島英久社長は、期間限定で季節の果物を使う「とびきり大粒ヨーグルト」シリーズなど、手詰め製法ならではの新商品も展開。コンビニやスーパーを販路に、〝北乳クオリティー〟を全国に広めてきた先代の業績を引き継ぎ、ほかの追随を許さない唯一無二のブランドを築いている。
地域の人たちと共に歩み海外にも北海道の恵みを発信
房の欠けたミカンが入らないよう手に取って検品するなど、1種類ずつ丁寧に果物を充填する「フルーツサラダヨーグルト」の製造ラインでは、総勢150人ものスタッフが働いている。人口減少が進む中、手詰め製法を維持することはたやすくないが、職場環境の向上を図りながら、この製法を通して雇用を守ることにも努めている。発酵デザートのほか、道産生乳100%で作る業務用クリームチーズ「リュクス」は、地元の洋菓子店をはじめ全国のプロに愛用されるブランドに成長したのを機に、今年から家庭用商品の販売も開始。「海産問屋から始まった企業として地域に根付いた商品を育てたい」との思いから、スプレッドタイプのクリームチーズ「プリマール」に、明太子を合わせた新商品も登場させた。「生乳生産の基地として北海道の重要度が増しているので、コミュニケーションを大切に、道南の生産者を継続的に支えていくのも弊社の使命。生乳にしっかりと付加価値を付け、発信していきたい」と田島社長。国内はもとより、海外への輸出にも力を注ぎ、北海道の恵みを世界に広めている。
北海道乳業株式会社
函館市昭和3‐6‐6
☎0138‐42‐2241(代)
https://www.hokunyu.jp/
ハコラク2022年1月号掲載