11月8日は、語呂合わせから「い(1)い(1)歯(8)」の日。函館市内で40年以上訪問診療を続けている歯科医師がいる。医療法人源裕会光銭歯科医院(函館市本通2)の光銭裕二名誉院長(72)。今では、普及してきている訪問診療だが、当初は批判的な意見もあったという。「動けない患者さんのところには、動ける私たちが伺って歯科医療サービスを提供する」を信念に日々治療を続けている。(横山蔵利)
光銭名誉医院長は、函館市出身。地元の高校を卒業後、日本歯科大へ入学。卒業後は、北海道大学で助手として後輩の指導にあたった。専門は、当時としてはまだ珍しい歯周病だ。
大学病院では、全身的に重篤な患者の治療も頼まれたという。口腔ケアを頼まれたという。口の中がきれいになると表情がよくなる患者さんを多く経験した。早朝から深夜まで働いた。「あの時の勉強が基本になった。若いからなんでも吸収できた」と話す。
歯科医院開業直後から訪問診療をスタート。歯科医の基本的な道具のほか重いコンプレッサー、診療時に使うマットなど重装備で訪問先に向かった。
歯科は外科的なものが多いとされることから「治療は設備の整った院内ですべき」という声もあった。
動けない人が目の前にいる。信念は揺るがなかった。ほぼ寝たきりの女性の入れ歯をつくり合わせた。何度か通ううちに歩けるようになっていた。
「驚いた。口から食べるという力のすごさをあらためて思い知らされた」と振り返る。
また、がんで余命1カ月と言われた男性を治療した時だった。自分の口から食べられるようになり、元気を取り戻していった。その後、3年半に渡り普通の生活ができるようになったという。
さらに、脳血管障害、がんなどでホスピスに入院していた女性でも、表情が明るくなり穏やかになった。
日本歯科医師会は1993年に11月8日を「いい歯の日」として設定。4月18日の「良い歯の日」などとともに歯・口の健康維持、増進を図る活動を展開。厚生労働省のデータによると、要介護(要支援)認定者は、2000年4月末で218万人が22年3月末には690万人に達した。
歯周病ケア、口腔ケア、訪問診療に先駆けて取り組んできた。近年、人生の最期を自宅やホスピスで迎えたいという人が増えている。願いは「『長生きしてよかった。よい人生だった』と思ってもらえるように手伝っていきたい」と語り、「体が動く限り歯科訪問診療を続けますよ」と情熱は変わらない。



