手作りにこだわる味付けジンギスカンを
木古内町から発信
地域に親しまれる商店から味付け食肉の専門店に
木古内町で90年以上、〝きゅうじょうさん〟の呼び名で親しまれる「久上工藤商店」。魚の行商をしていた創業者が、1930年頃に店を立ち上げたのが始まりとされ、食料品や酒類、日用雑貨を扱う商店として歩んできた。3代目として事業を引き継いだ工藤秀範社長は、量販店の増加や地域の人口減少の影響を受ける中で、久上の名を守ろうと新事業の立ち上げを決意。当時、道南では一般的ではなかった味付け肉の製造に着目し、元々週に1度は家で食べるほど好きだったというジンギスカンの製法を一から勉強。食料品の仕入れ先として長年親交があった、夕張郡栗山町の老舗食肉加工メーカーに何度も足を運び、試作品にアドバイスをもらうなどして、1年がかりで自家製ダレが完成。2008年に「味付ラム」をはじめとする味付け肉の販売を開始した。現在は食肉加工の専門店として、木古内町の姉妹都市・山形県鶴岡市の月山ワインを使った味付けラムや道産エゾシカ肉のジンギスカン、八雲町の海洋深層水を取り入れた塩ホルモンなど、多彩な商品を展開し、地域のスーパーや道の駅にも商品を卸している。
秘伝のジンギスカンダレで地元に新たな特産品を
リンゴの搾り汁のフルーティーな甘さに、ブラックペッパーなどのスパイスを利かせ、肉の旨みを引き出すという久上のオリジナルジンギスカンダレ。味付けラムを中心に人気を集めてきた同社が、道外の物産展への出店をきっかけに、羊肉が苦手な人にもジンギスカンを味わってもらおうと考案したのが、秘伝のタレをベースに八雲町産の豚や道産若鶏などのこだわりの素材で作る味付け肉シリーズ。中でも、昨年10月に発売した「道南とっておきの豚ジンギスカン」は、駒ケ岳の裾野で、澄んだ空気とミネラル豊富な地下水で飼育される森町産のSPF豚「ひこま豚」を使った一品。ジンギスカンダレに道南産のブドウ100%で作られた「はこだてわいん」の酸味ある赤ワインや豆板醬を合わせることで、ひこま豚ならではの脂の旨味が引き立つ、すっきりとした味わいに仕上げた。将来的には、地域の生産者と協力し、木古内町産の食材で肥育するブランド豚の開発を目指しており、さらに地域色を高めて新たな特産品へと成長させるのが目標という。
手作業の徹底した下処理で極上のやわらかさを実現
「肉はちょっとした筋でも、硬いところが残っているとおいしくない。とにかくやわらかく仕上げるのを大事にしています」と語る工藤社長が、製造工程で最も注力するのが肉の下処理。「道南とっておきの豚ジンギスカン」は、ひこま豚の内モモの部位を塊肉で仕入れ、スライサーで薄切りにしてから、包丁を使って余分な脂を切り落とし、1枚1枚丁寧に筋切り。商品ごとに焼き加減やタレの絡み具合を考えて切り方や厚みを変えるという。特に野生肉であるエゾシカ肉は、硬く太い筋が多いため非常に手間がかかるが、手作業にこだわって下処理することで、肉質がやわらかくなるのはもちろん、タレの味が絡みやすく、焼いた時にも肉が縮みにくく仕上げている。「肉質が硬いイメージがあるマトンなどの商品では、〝こんなにやわらかい肉は食べたことがない〟と驚かれることもあり、お客様においしいねと言われることが何よりのやりがいです。地元の方が子供や孫に送ってやりたいと買いに来てくれるのも嬉しいですね」と工藤社長。労力を惜しまぬ真摯な仕事で、愛され続ける商品を生み出している。
有限会社久上工藤商店
木古内町札苅214
☎01392‐2‐2312
8:30~19:00
(日曜は9:00~18:00)
第1・3日曜定休
P有り
キャッシュレス決済利用可
ハコラク2022年12月号掲載