北海道から広島県に転居した時、たわわに実るさまざまな柑橘(かんきつ)類には本当に感激した。北海道では見られない光景だったからだ。同じオレンジ色の柿も、長く北限は青森とされていた。だが実際は北海道でも伊達近郊までは元気に育つ。いや札幌でも立派に育っている。
数年前、札幌の家の隣家から大きな実をつけた柿の枝をいただいて仰天した。信じられなくてお庭に入れていただいたのだが、たくさんの実をつけた2本の大木を見て言葉を失った。雪をかぶった柿の実のなんと美しかったことか。食べた柿の種を植えたところ、8年目から毎年実をつけているとのこと。「桃栗三年柿八年」の言葉通りである。
今年も実のついた枝をいただいた。渋くて食べられないが、飾るだけで室内は初冬の風情満点である。柿は縄文時代の遺跡からも発掘されているし、古い書物にもたくさん登場する。日本人とは長い付き合いの果実なのだ。
柿の学名はディオスピロス・カキ(Diospyros kaki)。「神から与えられた植物」という意味だという。パーシモンという英語ではなく、そのままカキと発音して広く世界に通じるほど、日本の柿の認知度は高くなったという。
誰もが育たないと思っていたのに立派に実をつけている北海道の柿の木。私も種を植えたいと思っているのだが、売っているのはすべて種無し。大きな種入りの柿が懐かしい。もっと北の地でも人知れず、すくすく育っている大木があるのではないだろうか。想像するだけでなんだか楽しい。(生活デザイナー)