この時期、札幌の北大構内は大勢の人でにぎわう。黄色くなったイチョウ並木が大人気なのだ。さすがに今年は静かだと思いきや、昨年同様、警備の方は大忙し。写真を撮る人たちが車道に出ないよう気を配らなければならない。海外からの観光客はほとんどいないのに、今や立派な観光名所である。
それにしても私たちはなぜこんなに黄葉や紅葉に心躍るのだろうか。春の桜に負けてはいない。むしろ秋の方が落葉広葉樹の種類は多く、刻々と色を変える葉を長く楽しめる。そしてある日一斉に散る。そのさまも見事である。さて、木の葉はなぜ散るのだろう。環境学を教えている大学で学生に聞くと「冬になるから」と疑いがない。冬こそ葉が必要ではないのかと聞くと答えに窮する。
日照時間が短くなり、気温も低くなれば、葉で作る養分やエネルギーより使う方が多くなる。乾燥で水分は蒸散し、重い雪のダメージも大きい。北国の広葉樹は葉を切り捨てる方が良策だったのだろう。さらに葉を落としても傷にならない仕組みも備わっている。カロチノイドという色素が目立てば黄色、アントシニンができれば赤くなる。
アスファルトの街路では掃除が大変な落ち葉だが、土に帰れば土壌の養分になる。積もった落ち葉はその下で暮らす微生物を守るというから感動である。ウイルスの猛威で右往左往の私たちをよそに、木々は生態系の一因として毎年淡々と同じことを繰り返す。人間の無力さを痛感するこの秋、木々の美しさがいつもより眩(まぶ)しい。(生活デザイナー)



