「現場が長かったが、今は一歩引いて全体を見なければいけない立場。救急以外にもアンテナを高くして、日々情報収集を心がけている」―市町村合併前の旧渡島東部消防事務組合時代から救急隊員を長年務め、19年4月に救急係長に就任。市内の9消防隊、90人近くの隊員が円滑に職務を遂行できるよう心を砕く毎日だ。
旧南茅部町出身。1992年、南茅部消防署(当時)が5年ぶりに消防士を募集することを知った両親の勧めで消防士に。救急救命士の国家資格を取り、結婚し2女1男に恵まれた。その頃は「このまま一生地元で暮らすのかと思っていた」といい、函館で働くことになるとは想像もしていなかった。
転機は2004年、旧東部4町村が函館市に合併したこと。杉林さんも的場支署の救急隊に異動となり「南茅部では1日1件あるかどうか」だった救急出動が、24時間勤務中に10数件出動することもある忙しさに戸惑った。「函館では救急隊に求められる専門性は高い。慣れるまでは大変だったが、数々の特異事案も含め、多くの経験ができ、非常に勉強になった」と振り返る。
いま、函館の救急隊が最も頭を悩ませているのが新型コロナウイルス対策だ。杉林さんは「コロナ禍は、これまでの消防人生の中でも最大の試練」と話し、「隊員から1人の感染者も出さずにこの試練を乗り切りたい」と願う。(神部 造)