道は28日、太平洋側の日本海溝(三陸・日高沖)と千島海溝(十勝・根室沖)で巨大地震が発生した場合の道内市町村別の被害想定を公表した。道南は七飯町を除く渡島管内10市町が対象で、死者数は冬の夕方で最大5万4680人、このうち函館市で2万9000人。ただ、津波からの早期避難率を高めることや、津波避難ビル・タワー整備の促進、建物の耐震化を進めることで、被害は最大9割減らせるとしている。
避難対策で被害最大9割減
道の浸水想定設定ワーキンググループが、昨年7月に公表した道太平洋沿岸の津波浸水想定の結果を活用。国は同12月、日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震に関し被害想定を公表、これを受け道は詳細な検討を行い、被害の規模を明らかにした。
渡島で最も死者数が多いのは冬の夕方で、函館市が2万9000人。日中の函館での就業人口が多いためで、冬の深夜(2万2000人)を上回った。このほか、北斗市は冬の深夜に1万8000人、八雲町は冬の夕方に3200人に達する。建物の全壊棟数は、渡島で夏の昼、冬の夕方、冬の深夜いずれも変わらず7万5230棟だった。内訳は函館市4万8000棟、北斗市1万2000棟、八雲町4000棟など。
負傷者数は、夏の昼で早期避難率が低い場合に函館市で最大940人、低体温症要対処者数(冬の深夜)は函館市で1万人、避難者数(冬の夕方で早期避難率が低い)は函館市で7万人と推計した。
鈴木直道知事は「今後、津波避難施設の整備の促進や、より避難意識を高めることなどハード・ソフト両面からの取り組みを推進することで、さらに被害の軽減が可能なことから、道は国や市町村、防災関係機関と連携・協力し『何としても命を守る』ため、総合的な防災・減災対策に取り組む」とコメントした。
函館市総務部災害対策課の井上徹也課長は「函館市は人口規模が大きいので、最悪の状況での予想死者数は多いが、避難対策を万全にした場合には大幅に死者数を減少できることも記している。数字を細かく分析し、市地域防災計画の見直しにつなげていきたい」と話す。
市は昨年、道が発表した日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震での被害想定に基づき「防災ハザードマップ」の改定作業を進めており、今秋にも市民に配布する予定。井上課長は「以前に比べ浸水想定地域が拡大しており、新たなハザードマップで自分の住む地域の状況を再確認してほしい」と呼び掛ける。このほか、浸水地域拡大に伴い市内中心部に設置する防災行政無線も20カ所程度増やす見通しという。(山崎大和、小川俊之)