英国のEU離脱が確実となり、急激な円高・株安が進行したことで、函館の経済界にも激震が走った。円高と株価下落による景気の悪化が懸念され、先行きの見えない状況に地元企業からは不安の声が上がっている。
一時、2年7カ月ぶりに1ドル99円台となった円の急騰について、函館商工会議所の松本栄一会頭は「道南への影響は限定的になるのではないか」とした上で、「このまま円高が進むと、製造業の業績悪化につながる恐れがある」と懸念を示す。
造船業の函館どつく(弁天町)は、中国との激しい受注競争や円高による為替差損などで昨年度売上高が前期比12%減少。本年度の売上高も、18%減の230億円と厳しく見積もっていた。総務部の小田一俊次長は「想定外の事態。円高基調が継続すれば、さらに業績予想の下方修正も考えなくてはならない」と頭を抱える。
東南アジアに販路を持つ洋菓子製造販売のぺシェ・ミニョン(乃木町)の松浦績取締役は「売上高に占める輸出の割合はそう高くないが、状況を慎重に見極めたい」。
全国で給油所を運営するアサヒ商会(東山町)の斉藤巌社長は、今回の急激な円高の反動によって一気に円安の動きになる可能性もあると指摘。「会社として為替相場の大きな変化に対応できるよう、準備をしていく必要がある」とした。
株価下落で消費縮小を不安視する声も。テーオーデパート(梁川町)営業計画担当の本多烈さんは「個人消費の冷え込みがさらに加速する不安はある」としながらも、「この変化をチャンスとして捉え、次の手を打っていきたい」と話す。
日本貿易振興機構(ジェトロ)北海道の白石薫地域統括センター長は「英国のEU離脱による円高を見越し、海外向けの商品単価を値上げした道内の食品企業もある。ビジネス面で〝UKショック〟が出てくるのは避けられないだろう」と指摘する。
また、交流団体にも戸惑いがみられる。函館日英協会の高市道也常務理事は「個人的にはEUから離脱しない方が良い。国際的な情勢を考えれば抵抗感がある」としながらも、協会の活動に大きな影響はないとみている。(金子真人、山田大輔、鈴木 潤)