北大水産学部附属練習船「おしょろ丸」(1598トン)が6月8日から5年ぶりの北極航海を実施する。ベーリング海と北極海に接するチュクチ海を対象とし海洋生態系を観測、サンプル採集するなどし、海洋環境の変化が海洋生態系に与える影響の総合的理解を目指す。同大大学院水産研究院の上野洋路(ひろみち)准教授は「温暖化による環境変化が著しい北極海で、海洋生態系がどのような影響をうけているかデータをもとに見極めたい」と航海の意義を強調する。
おしょろ丸は2014年7月竣工。水産科学や関連分野の研究と実習に取り組み、同分野で活躍できる人材の育成を目指す。世界水準の教育研究環境を整えた練習船で、「静かで揺れない洋上のキャンパス」として、北海道近海からベーリング海、北極海を含む亜寒帯の航行を想定した耐氷構造を備える。全長78・27メートル、最大積載人員99人。乗組員のほか、教員7人、学生60人が乗船できる。
航海は、6月8日に出港、米国アラスカ州ノームに2回寄港しながら57日間の航海を実施。期間中、各種実習、海洋・生態系調査を実施する。同学水産学部・大学院の学生の17人のほか、修士・博士論文の観測・データ収集のため、アラスカ大など国内外の大学院生が乗船する。
さらに航海後半7月12日からは、文部科学省北極地域研究加速プロジェクト(ArCSⅡ)の一環の公開実習として、全国の大学生10人が乗船、自然科学系の海洋観測や北極圏の歴史や文化を学ぶ。(佐藤由紀彦)