犬の散歩で思わず足が止まった。ついこの前まで美しい花を咲かせていたダリアの花壇がない。公園を管理する方々が球根を丁寧に掘り上げ、一つずつ名前の札をつけていた。越冬させて、また来春植えてくださるのだろう。厳しい冬はそこまで来ている。だが必ず春は来る。時の流れはいつも同じで、めぐる季節は決して裏切らない。
それに比べて近年の私たちの生活はどうだろう。驚異的な速さで変化している。特にこの2年は、かつて経験したことのないことが続き、こちらの戸惑いなどおかまいなし。閉塞的な日常が強要されてきた。そして気がつけば、教育も仕事もリモートだ。何もかも自宅でできるようになった。ワープロからパソコンに変わったのはいつだったか。まさかこんな時代になるとは予想もしなかった。
怖いのは、季節がめぐるのとは違い、この時の流れが一方向だということである。加速度を増して次々に新しい技術や考え方が提案され、順応しなければ暮らしていけない。マスクを求めてドラッグストアなどに早朝から並んだのは、わずか1年半前のことだ。そのマスクがファッションの一部になり、キラキラしたアクセサリーをつける女性たちも増えてきた。
働き方も住む場所もあっという間に選択肢が広がった。生活文化がこんなに速く変わった例がかつてあったろうか。だからこそめぐる季節がうれしい。変化変遷は歴史の常だが、せめてついていける速さであってほしい。吟味し、俯瞰(ふかん)できる余裕が欲しい。(生活デザイナー)