東京オリンピックが終わった。開催か中止か、その議論は尽くされぬままスタートして、あっという間に終わってしまった。始まれば面白い。連日、テレビに釘付けになった人は多かったと思う。日本は多くのメダルを獲得したが、順位とは関係のない感動的なシーンは随所にあった。だが感動を超える収穫が私にはあった。新しい時代の確信である。
知らない競技がいくつもあり、ルールも分からず困惑したのもその一例。前回のオリンピックから5年。この5年で時代は確実に変わった。スケートボードは象徴的である。ラフなウエアが新しい。そして、成功しても失敗しても競技を終えた選手をライバルたちにみんなで走り寄り、肩をだき、褒めたり慰めたり。そんな競技が今まであっただろうか。同じ夢を見て共に最善を尽くする仲間だという意識とふるまいは実に新鮮だった。
新しいスポーツに学ぶところは大きかった。さまざまな競技の解説にも新しい風が吹いた。「ヤベエ」という称賛の表現は、新時代のゴングにも聞こえた。そして勝っても負けても、選手たちには日の丸を背負った悲壮感は感じられない。賛否はあろうが、コロナの蔓延がなくても、時代は変革の時だったのだろう。スポーツだけでなく、働き方にも暮らし方にも、すべてに吹く風が変わった。
テレビ観戦佳境の日、セールのカニを買った。小さいながら皿の福の文字によく映えた。新時代の風についていこう。老夫婦でささやかに乾杯した。
(生活デザイナー)