私には趣味がない。だがコレクションはあるかと聞かれれば、食器かもしれない。高価な作家モノやアンティークではなく、日々楽しく使える器を見つけるとつい買ってしまう。そのたびに家人はあきれるが、彼の母親も料理研究家だったせいか、新しい食器を使うと、毎回良いコメントをくれる。
今回は花の形をした黄色い器を手に入れた。同じメーカーの器をいくつか持っているが、使うと食卓が一気に明るくなる。オリンピックが始まっても気は晴れないし、不本意なことばかり続いているが、せめて食卓はカラフルにと心掛けている。見渡せば周囲には白い食器が実に多い。この傾向は日本だけでなく、ヨーロッパや中国でも同じなのだ。それぞれの国や地域に、そこの土で作る陶器があり、独自の色や模様があるはずだが、無難な白い器に急速に置き換わりつつあるようだ。
確かに白い器は料理を選ばないが、料理や盛り付けの良し悪しは目立つ。その点、個性的な色や形の食器は何をどう盛り付けても「サマ」になるからうれしい。何より食べる前に「目」が元気になる。写真の黄色い器はフランスのメーカーの定番で、実は重くて収納も難しいが、世界中にファンがいる理由がよく分かる。
日本にも素晴らしい食器がたくさんある。漆器を含む日本の食器文化はなんとしても守りたい。カラフルな食器は若い人や子供たちの食器への関心を高めてくれる。作家モノでも大量生産品でも、色や柄のある器のあたたかさを楽しみたい。(生活デザイナー)