茹(ゆ)でたタケノコをいただいた。煮物にしようと思ったが、味噌(みそ)マヨネーズで食べるのがおいしいとのアドバイスに従って正解だった。アスパラとマッシュルームも地物なので、北海道らしいサラダになったと喜んだところで思い出した。
「北海道のタケノコは細いのね」と本州の友人に言われたことがある。春先出回る太いタケノコは、アク抜きは大変だが、それでも食べたい季節の味覚である。だがそれは孟宗(モウソウ)竹の竹林のある地域のタケノコである。函館には何カ所か竹林があるし、松前の竹林も有名である。だが今のところ道南に限られている。近年の温暖化で繁殖の北上が進んでいるようだが、竹林が増えると新しい問題も増えるはずだから喜んでばかりはいられない。
さて、竹林はないのに北海道全域で写真のタケノコが採れる。だが、このタケノコは正しくはササノコと呼ぶべきかもしれない。千島笹の新芽で、姫タケ、笹タケ、細タケなどとも呼ばれる。本州のタケノコとは全く別モノだが、春の味覚としての位置付けは同じである。竹や笹の新芽を食用にし、アク抜きや保存の方法を工夫した先人に感謝したい。そのおかげで私たちは今、自然の恵みを堪能できている。
外食は控えろ、食事は自宅で、と声高に言われる昨今だが、料理にかける時間が増えたわけではない。そんな中、シンプルに茹でたり焼いたりするだけでおいしい野菜はうれしい。気の晴れない日が続くが、せめて季節の味覚は謳(おう)歌したいものだ。(生活デザイナー)