「端午の節句」は終わったが、菖蒲の葉が美しいので、いろいろ飾って楽しんでいる。互い違いに葉を絡めると面白い表情が出た。葉を組み合わせている時、中央を走る葉脈の硬さが気になった。そうか、この葉はサトイモ科の菖蒲だったと思い出した。端午の節句の頃には、アヤメの花をかたどった和菓子が出回り、五月人形にアヤメの造花が添えられることもある。
パソコンで「アヤメ」と打つと「菖蒲」に変換される。現在は、節句の菖蒲は美しいアヤメの花とみごとに混同されているようだ。アヤメはアヤメ科で、カキツバタやアイリスなどとともに、その美しい花が愛されている。だが、端午の節句に、菖蒲湯にする菖蒲はサトイモ科の全く別の植物である。香りがあり、薬効も知られているので、古くから邪気払いや厄除けの植物として使われてきた。
昨今は節句が近づくと八百屋さんやスーパーに袋入りで葉が売られている。写真の葉も八百屋さんで買った。サトイモ科の菖蒲の花は小さい房状で黄色。地味で目立たない。花菖蒲と葉菖蒲という分け方をすることもある。アヤメ科の花菖蒲の方の葉脈は並行で全体に均一な厚さだが、サトイモ科の葉菖蒲は、中央にしっかり盛り上がった硬い葉脈がある。
伝承のプロセスで混同されてしまったが、行事の植物として長く役割を果たしてきたのは自分の方だと、その葉は胸を張っているようにも見えてきた。伝統行事は正しく伝わってほしいと思うが、それが難しい。(生活デザイナー)