卒業式が中止になるという前代未聞の対応から1年。今年は開催されたところが多いようだが、家族や在校生の人数が制限されたり、式典や関連イベントが短縮されたりなど、異例であることは変わりない。卒業前の貴重な1年を異例ずくめで過ごした若い世代には同情を禁じ得ない。そんな中でも工夫しながらやってきたのだ。胸を張って次のステージに歩み出てほしい。
昨年、全国的に休校措置が取られ始めたころ、「9月入学」が話題になった。高等師範学校が4月に始まったのが明治19年。それ以来、国の会計年度に合わせて「3月卒業、4月入学」が定着したようだ。長くそのことは議論されなかったが、これを機に9月始業の多くの国に足並みをそろえるのかと、新しい風に少々期待した。だが、議論は深まることなくお蔵入りになってしまった。働き方も学び方も、この1年で大きく変わったように、教育システムも見直す絶好のチャンスだったように思うが、それどころではないのが現状だったのだろう。卒業と入学は桜に象徴される行事になって久しい。このことも、9月入学案の議論が深まらない理由の一つかもしれない。
北国はまだ雪の中だが、家庭懐石を教える自宅教室ではお花見気分の食卓を作ってみた。早くも店先に並んだタラの芽の天ぷらなど、竹串を使って立体的に盛り付け、満開のトウカイザクラを添えると、お盆の上だけ春になった。今年はお花見ができるのだろうか。我慢には限度がある。
(生活デザイナー)