ルース・ベイダー・ギンズバーグ氏をご存知だろうか。1993年、彼女はクリントン大統領に女性として史上2人目の連邦最高裁判所判事に任命され、昨年87歳で亡くなるまで、男女平等の問題や、さまざまなマイノリティーの人たちの権利を守るために活躍した。アメリカではその頭文字から「RBG」の名で親しまれ、「RBG最強の85歳」というドキュメンタリー映画は今も話題である。
彼女を妻にした法律家は、料理どころか食べることさえ忘れて仕事をする妻に、せめて一日に一度は食事をさせるのが大変だったと笑顔で振り返った。二人のお子さんは、母の料理が下手だったことを笑顔で語る。なんと素敵なことか。最強の85歳は料理も家事も苦手だったのだ。それでいい。料理も家事もできない男性は山ほどいる。
息子さんに、料理上手のお嫁さんが来ると喜んでいた友人がいるが、お嫁さんにも仕事がある。「ご飯も炊けない」息子さんは、大至急、必要最小限の料理を学ぶべきところだが、誰もそんなことは言わない。料理が好きな若い女性には、「いつでもお嫁にいけるわね」とみな口をそろえる。共に生活する者たちが家事を応分に分担する時代は果たして来るのだろうか。
女性への偏った期待はいつまでも変わらない。RBGはお嬢さんに「淑女であれ、自分らしく自立した人間であれ」と言い残した。今年の雛人形は、女雛を一歩前に出してみた。次世代への、せめてもの私からのエールである。(生活デザイナー)