若い仕事仲間がチューリップを抱えて訪ねてくれた。いつも彼女の家の近くのお花屋さんで買ってきてくれる。仰々(ぎょうぎょう)しい花束ではなく、季節の花を一種類、それがうれしい。気取ったラッピングではなく、お店の名前入りの包装紙がまたいい。気軽に花を手土産にする彼女のセンスは、以前パリで仕事をしていたからかもしれない。こんなさりげない花の贈り方は、日本にはまだ定着していない。記念日やお祝い、葬儀など特別な時だけでなく、お菓子や果物を買うように気軽に花を買う文化が育てばよいのにといつも思う。
文化といえば、元首相が驚くような発言をして国内外を仰天させた。これまでも、何度も耳を疑う発言をしてきた。子供を生まない女性を税金で守る必要があるのかという、看過できない発言も記憶に新しい。だがそれらを取り上げて問題視せず、風化させてきた周囲の責任こそ小さくなかったのではないだろうか。
この時期にあの発言が飛び出したのは、むしろ遅かった気さえする。ご本人はどこが間違っていて、何が問題なのかわからないので、どんなに詰問されても、真の反省や謝罪など無理なのだろう。だが元首相のような意識は、悲しいかな、ある時代、ある世代の一つの文化なのだと思う。男尊女卑(だんそんじょひ)という言葉は死語ではなかった。「そんな時代もあったね」という歌があったが、そう笑える日は本当にくるのだろうか。若い世代に期待したい。(生活デザイナー)