直径10センチの小皿に目がとまった。九谷焼にドラえもん。何種類かあったうちの2枚を買い求めた。一緒にいた娘とその友だちも、これが九谷焼なのねと、鮮やかな黄色と青と緑の組み合わせに声をそろえた。
その後、若い友人から、やはり九谷焼とモダンなデザインの組み合わせの豆皿をいただき、はし置きや薬味入れとして重宝している。日本は各地に優れた焼き物や漆器がある。後継者がいて、販路が確保されているならば良いが、昨今は手強いライバルがいる。
100円均一ショップには魅力的な器があふれている。和洋中華のジャンルを問わず、無難な白い器が大人気である。個性的な形の陶器や、扱い方が難しい漆器、ましてや高価な器が敬遠されるのは仕方があるまい。だがその結果、生産地の風土や、作家の息づかいを感じさせる陶器や漆器が若い世代の目に触れる機会は少なくなり、貴重な文化の継承は難しくなってしまう。使ってみると、伝統的な手仕事のぬくもりや使い勝手の良さがすぐにわかる。まずは目をひき、触ってもらうこと。そのきっかけになるのなら、話題のモチーフやモダンなデザインとの組み合わせ、新しい使い方のご提案は必要なのだろう。
日常の話し言葉も刻々と変わってきた。昭和初期の住宅はおしゃれで素敵だが寒い。和服の着方も現代的に工夫する人が増えてきた。時代に合わせて変わるのが文化である。変化、変革に柔軟でありたいが、どこをどこまで変えるのか、残すのか、そこが問題である。実に悩ましい。(生活デザイナー)