写真は「ホオズキ」の花である。「ホウズキ」でも「ホオヅキ」でもなく「ホオズキ」である。名前の由来には諸説あるが「鬼灯」と書く。色と形がロウソクや提灯(ちょうちん)を連想させるせいか、ちょっと怖い漢字である。
お盆に供えるところも多いようだ。そもそもふっくら膨らんでいるのがガクだということは意外と知られていない。花が咲いた後、ガクが発達して果実をふんわり袋状に包む。だが包みが大きく目立つ割には中の果実は小さい。「偽り」とか「ごまかし」という花言葉があるのはそのあたりに理由があるのだろう。
果実が熟すと袋も赤くなる。子供の頃、果実の中身を出して、口に含んで音を出す練習をしたがうまくいかなかった。上手にできる子がうらやましかった。最近は食用ホオズキも人気だが、昔から薬用としても知られている。腹痛や子供の夜泣き、せき止めや解熱など万能。使い方次第で注意が必要な品種もあるというから驚く。見た以上のパワーがあるようだ。
有名な浅草寺の夏の風物詩「ほおずき市」に一度行ってみたいと思っていたが今年は中止になった。テレビで行き場をなくしたホオズキを配っているところを見て切なくなった。白い小さな花は人間とウイルスの騒動にお構いなしに今年も咲き、果実を包んだ袋はいつもどおり赤くなる。袋がカサカサに乾いたころ秋風が吹く。そのころは安心して人に会いたい。見過ごしてしまいそうな小さな花がなんとも頼もしく見えた。(生活デザイナー)