テレビをつけたらウイルスの話題。その大半は対策や支援の仕方への不満と批判である。そんな中、ある番組を見てはっとした。保育園か子供たちの療養施設だったか失念したが、不要な方々からたくさんのマスクを寄付していただいた園長が、本当にうれしいと話していた。
国が配布したマスクである。マスクはいくつあっても足りない上、これは肌に優しくてありがたいのだと笑顔だった。本当にうれしそうだった。このマスクは当初からすこぶる評判が悪かった。莫大な経費への批判の後は、ネット上では「まだ届かない」と配達の遅さへの不満。さらに「届いても使わない」「早く見てアラ探しがしたい」など意地の悪い期待。運悪く「不良品」が見つかれば「ほら見たことか！」とまた言われた。届けば今度は「今頃こんなモノいらない」との声がたくさんあった。
支援金もそうだ。金額が少ない、手続きが面倒、支給が遅いなど、取り上げられるのは不満ばかりである。確かにそうかもしれないが、「柔らかくて使いやすくてうれしい」というあの笑顔は、忘れていた大切なことを気付かせてくれた。皆不平不満を言うことに抵抗がなくなってはいないか。感謝すべきものも中にはあるのではないだろうか。
人間たちの騒ぎをよそに今年も桜は咲いた。田植えも畑仕事も人を待たない。手を掛けただけ美しく咲き実りは多い。植物は無口だが正直である。今年は小さな庭からもたくさん学んでいる。（生活デザイナー）
函館新聞 X（旧Twitter）
函館新聞Facebook
函館新聞Youtubeチャンネル
ハコラクInstagram