「北海道の自然」という授業がスタートした。文系・理系両視点から歴史や文化、自然環境について話してほしいという大学からの要望だった。
初回、「北海道といえば何を連想するか」と質問したところ、「ジンギスカン」という声が多かった。そこで、「その羊肉はどこ産か」と聞くとみな怪訝(けげん)な顔。「99%以上が輸入」と言うと一様に驚いた様子だった。「わざわざ北海道に来てジンギスカンを食べる意味はないってことですか」と逆に聞かれた。
タレの工夫や野外で食べることが多いなど、気候風土に合わせて広まった歴史が北海道らしいと言われているが、学生の指摘通り、輸入の肉はどこで食べても同じである。そんな例は他にもある。「北海道の回転寿司の一番人気は何か」とまた学生に聞いてみた。「サーモン」と声がそろった。「それも輸入がほとんど」と言うと再び落胆の声。こんなにサケが獲れているのにと誰もが思ったに違いない。不思議なことはたくさんある。この授業はそれらをいっしょにひも解き、考えていきたいと伝えて1回目の講義をしめくくった。
ジンギスカン用の羊肉の輸入も、海外からのサーモンの普及も、そのおいしさを広めようと考えた人たちの総力で今日まで来た。地産地消の文化とは言えないが、北海道という新天地ゆえの文化の受容ではなかっただろうか。
急に寒くなった昨夜はサケの粕汁を作って三平皿に盛った。イクラも安い。北海道の秋はなかなかいい。(生活デザイナー)