アイルランドからイギリスのリバプールに向かう飛行機が遅れた。霧は深くなるばかり。家族が一緒だったので心細くはなかったが、2時間経っても何のアナウンスもない。
電光掲示板を見ると「SHOP EAT RELAX」とある。「買い物して食事してリラックスしてね」ということか。待合室のキャッチフレーズならよいが、フライト情報の電光掲示板にはいかがなものか。リラックスなどできるものか、明日は長女の卒業式がある。せめて情報がほしいと思ったが周りは皆落ち着いていた。
その後やっと、バスで2時間以上かかる隣の空港から飛ぶことになった時は、さすがに小さな歓声があがった。乗客の多くはサッカー観戦が目的だったらしい。今からバスにそんなに乗るのかと驚いたが、飛行機が飛ぶことのほうが皆うれしいようだった。
イライラしても何も生まれない。そんな人たちに囲まれていたせいか、私たちもだんだん楽観的になってきた。さんざん待ったあげく、バスで長時間移動させられ、面倒な手続きをし直して搭乗することさえ、旅の思い出になりそうな気がした。
エレベーターが来るのが遅いくらいでイライラし、数分の遅れでも交通機関を批判する私たちのほうがおかしいのかもしれない。国民性の違いか。5時間遅れてリバプールに着陸した時はサッカーファンたちの大拍手と歓声が機内にあふれ、誰もが笑顔だった。もちろん私たちもその輪の中にいた。(生活デザイナー)