食卓の仕事でキャンドルが必要になり、あちこち探して驚いた。あるわあるわ、さまざまな色や形のキャンドルが出てきた。写真はその一部である。
花のデザインの勉強をしていた40年近く前、食卓にキャンドルをともす提案は、受け入られなかったように思う。北欧の生活を模して、暖かな明かりを楽しもうと提案しても、食卓もそれほど大きくない日本の家では難しかったのだろう。それでもせっせとキャンドルを作ったり集めたりしていた私は、太くて安定感があるものが好きだった。
今回、それらがいくつか見つかった。何十年も倉庫で眠っていたキャンドルたちは昔通り明るくともった。火は単に明かりや熱源として使うだけでなく、人の目と心を引きつけ、優しい気持ちにしてくれる。実に不思議な力がある。祈りの場に必ず火があるのは当然である。
さて、今こそ私たち日本人はキャンドルに注目すべきではないだろうか。9月、北海道を襲った大地震はもはや日常会話の中心にはなく、その直後ほどの危機感を私たちはすでに持ってはいないような気がする。長い停電や断水を経験して、当初みんなで心掛けた節電も節水も平常に戻ってしまった。
喉元過ぎればこんなものか。太くて安定感のあるキャンドルは頼りになる。実用性もありロマンチックでもある。たまにはキャンドルだけの静かな夜も悪くはない。いろいろ気が付くことがきっとある。(生活デザイナー)