老いては子に従え、と、この数年ハロウィーンが近づくたびに思う。節分も同じだった。縁起の調査研究をしていた頃、恵方巻きは昔から日本の風習だったという宣伝文句が気になって論文まで書いた。だが私の調査や抵抗など、何の力もなく、恵方巻きは日本の年中行事の地位を獲得してビッグビジネスに登りつめた。
一方でハロウィーンは、その起源からみてもどんなに菓子業界が頑張っても広がらないだろうと思っていた。ところがカボチャより奇抜な仮装が大人たちにも気に入られて、あっさりと市民権を得てしまった。
結局、歴史の有無や真偽、文化的背景がどうであれ、多数に支持されて拡大すれば文化になるということだ。私はそれをやっと最近学んだ。昭和30年代、函館・大門周辺のクリスマスはすでに華やかだったと聞く。子供の頃、若かった父は行きつけの店からクリスマス飾りをいただいてきて、わが家のツリーに飾ってくれた。それとて、明治生まれの祖母はどう見ていたのだろうか。バレンタインデーもしかり。発祥や海外の事情はさておき、暮らしにメリハリをつける行事として定着したのなら評価すべきだろう。
老いては子に従え、という言葉はここではふさわしくないかもしれないが、新しい文化はその行方をおもしろがって眺め、時に参加してみるほうが良さそうだ。コンピューターもSNSも若い連中に教えてもらって必死についていっている。加齢対策としても悪くはない。(生活デザイナー)