いつからだろうか、カフェ飯という一種のスタイルが生まれて、あっという間に日本中に広がった。それはいわゆる定食とは見た目が違う。主食と副菜が大皿にびっしり盛り付けられていることが多い。言ってみれば、お弁当箱の大皿版のようなものだが、スープはカップでサービスされ、これが流行っている。
日本では喫茶店とカフェは食品営業許可の種類が違う。カフェは飲食店営業許可があるのでアルコールも食事も提供できる。喫茶店は軽食のみとなっているが、店名と内容が一致していない場合もある。とにかくカフェが提供するカフェ飯は女性たちの人気を集めている。
このブームの普及と重なるように、ご飯とみそ汁の位置の不明瞭化が密かに進んでいるような気がする。毎年、学生にご飯の配膳の絵を描いてもらうのだが、右利きの場合ほぼ100%、ご飯は左で汁物は右だった。過去形で書くには理由がある。左右反対に描く学生が急速に増えてきたのだ。ある著名な料理研究家は書物の中で、汁物に先に箸をつけるので汁を左に置くことを提案していたが、なんとも心地の悪い配膳に思えたのは私だけか。
平安時代の庶民の食事を描いた「病草紙」にはご飯が左で汁椀が右に描かれているという。ご飯の位置の変化は、日本人にとっての米の飯の意味、主食という考え方などの変化と関係があるのだろ。心地良さは文章では残せない。文化を守ることは実に難しい。(生活デザイナー)