サッカーのワールドカップの熱気がすごい。若い人たちが活躍するのを見るのは気持ちがよい。そして今回の初戦には予想もしなかったおまけがあった。「大迫半端ない」という言葉である。高校時代の強すぎる大迫選手について、対戦相手の主将が涙で吐いた賞賛の言葉である。2008年の映像が幾度も再生され、今回の勝利で私も見るに至った。敵の大迫選手に対して「半端ない」と泣きながら吐いた彼の言葉は何度聞いても心が熱くなる。
「半端ない」というのは、中途半端ではなく最上級だという褒め言葉らしいが、日本語としては不完全なので今までは耳に障るなと思っていた。しかし今回、10年前の1人の高校生の「半端ない」のおかげで気持ちが変った。新しい日本語は生まれてもよいのだろう。文法的にはどうであれ、それでしか表現できない気持ちが新しい日本語を生むことは確かにあるようだ。
食事の時、娘たちは時々「普通においしい」と言う。その「普通」が分からなかった。「まずいが食べられないほどでもない」と言われているようで愉快ではなかった。だが今回の「半端ない」で少し分かった気がする。「普通に」と言う表現の中には「期待していなかったけれど」とか「期待以上に」という意味が微妙に含まれているのかもしれない。言葉は生きている。どの時代も若者たちは新しい言葉をつくってきた。なんだか素敵に思えてきた。(生活デザイナー)