昨日まで朝晩寒くてストーブに甘えていたのに、翌日は真夏の暑さ。これが北海道である。春がいま一つはっきりしない。桜が咲いた時はすでに小さい葉も花に寄り添っている。梅もボケもツツジも一斉に咲き、八重桜とライラックは共存する。この季節の足早さには毎年少し面食らう。
本州に住む人たちには理解しがたい時の流れ方ではないだろうか。冬の長さはあきらめよう。緑が萌え始めたら実りの季節までまっしぐらの北国のこの季節を謳(おう)歌したい。今年は特にそう思う。気がつけば夫は定年、娘たちも頼りないながら大人になった。犬もあっというまに9歳。すでに獣医さんでは高齢犬といわれる。時間の流れの速さにがく然とした春だった。
さてこれからどう生きようか。若いころからしっかり考えて準備すべきだったが、日々の暮らしに必死で今日まで来てしまった。悔いることばかりで珍しく気が沈む日が続いた。だが過ぎた日はどうにもならない。変えられるとしたら未来である。時の流れを確実に感じながらワクワクする未来がほしい。
それなら土だと突然思った。庭とは言い難い狭い軒下を掘り起こして耕してみた。かつてハーブの本も書いた私である。農学部園芸学科卒業でもある。食べるものを育ててみたくなったから不思議である。植物は日々確実に目に見えて育ち、こちらの手抜きがはっきりわかる。土も正直である。緑といっしょに丁寧に暮らすことで未来は少し変るような気がしている。(生活デザイナー)