9月9日は「重陽の節句」だった。なかなか定着しない節句なので毎年意地になって祝っている。ひな人形、兜(かぶと)、笹の葉と短冊など、他の節句には象徴的な装飾品や物語性があるが、重陽の節句はそれが乏(とぼ)しい。
だが、「上巳の節句(ひな祭り)」が「桃の節句」であるように重陽の節句は「菊の節句」。お花屋さんやお菓子屋さんには菊の花のPRと菊花型のお菓子作りをもっと頑張っていただきたいと毎年思う。今年は写真のように似たサイズの小菊を5種類集めて生けてみた。
すると、若い人たちから「どうして菊だけなんですか」と質問。菊の節句だからだと言うと初めて聞いたとのこと。長寿祈願の節句だと伝えると「菊を買って帰ろう」「家族に菊の花の酢の物を作ろう」などうれしい反応があった。世の中は「知らない」ことだらけである。そんな中、知って良かった、と思うことをどれだけ知らせるか、それが教育なのだと今しみじみ思う。「へー」とか「え?そうなの?」と若い人にどれだけ言わせるか、それこそが大人の大切な仕事なのだと思う。
この夏休み、中学2年生の女の子がわが家に滞在していた。ちょうどその時、結婚祝と友人の会社の創立記念のご祝儀を包む機会が重なった。さて熨斗(のし)は結びきりか、蝶結びか、彼女に考えてもらった。どちらでも良くないことに、まず彼女は驚いていた。
家庭で教えるべきこと、大人が伝えるべきことはたくさんある。伝えるためには大人自身が丁寧に暮らさなければならない。考えることの多い初秋である。(生活デザイナー)