道総研道南農試(加藤淳場長)が年1回、地元の農業者や自治体関係者に研究成果を披露する「道南農業新技術発表会」がこのほど、北斗市農業振興センターで開かれた。道南で暖房を使わず葉物野菜を育てる栽培法や、新たな品目を取り入れることで冬野菜の高収益化を目指す方法などが紹介され、農業生産者の注目を集めた。
道南農試研究部地域技術グループの発表では、北海道の冬季生鮮野菜が道外産に大きく依存しており、価格が高く供給も安定しない点を指摘した。そこで、道南で葉菜類を無加温ハウスで生産する技術を研究。試験ではハウスを3重にして保温機能を高めたうえで、コマツナやリーフレタスなど9品目を生育した。このうちコマツナやターサイ、カラシナは氷点下7度でも低温障害が目立たなかった一方、水菜や株張春菊は同2~3度で葉先が枯れるなどの障害が見られたという。
リーフレタスは道南地域で10月上旬に定植した結果、12月から収穫が可能となった。ハウス内の内張りやトンネルの不織布を併用することで2月上旬まで、慣行の春~秋季栽培時の収量と同等以上の結果となった。このことから、研究成果を発表した同グループの高濱雅幹さんは「リーフレタスやコマツナについては、晩秋までに収穫サイズにした後、冬は寒さで生育を止め、適時出荷できる。冬季無加温栽培野菜の品質は春夏季や道外産に決して劣らず、コマツナなどは糖度が高くなる」と特徴を紹介した。
渡島農業改良普及センターの発表では、北斗市の施設栽培における主要野菜の作付体系に触れながら、所得の向上が経営的課題となっていることを説明。現在当地で取り組まれている秋冬ホウレンソウを、晩秋どりリーフレタスに転換することで、所得の向上が見込めるとした。
具体的な取り組みとしては、北斗市レタス部会の6人がハウスの無加温栽培技術を導入。5人は早期定植型の夏秋トマト、残る1人はハウスを利用したネギの後作として導入した。結果について同センターの金ケ崎一美さんは「6人全員が所得向上につながり、協力してくれた農家からは『思っていたより簡単にできた』との声が上がるなど、実践可能な技術であることが証明された」とした。
加藤場長は「今年は全道からコメの新品種や新しい栽培技術など合計で153課題の成果が生まれている。ぜひ参考にしてもらい、今後の営農活動に役立ててほしい」と話す。
道南農試では今回の発表会で披露された研究成果をホームページ(https://www.hro.or.jp/list/agricultural/research/dounan/index.html)で公開しており、広く活用を呼び掛けている。(野口賢清)