函館港に寄港する豪華客船と北海道新幹線を組み合わせた、新たな旅行の動きが進んでいる。函館港から乗船できるクルーズや、寄港後に新幹線利用を組み込み、青森に渡るオプショナルツアーなど、さまざまな形で「レール&クルーズ」を展開。新幹線開業がクルーズ振興にも一役買っている。
本年度の函館港には、延べ29隻のクルーズ船が寄港を予定。大半の客船が接岸する港町埠頭(ふとう)と新函館北斗駅の移動時間はバスで20分ほどと比較的アクセスが良く、新幹線開業の話題性もあって、さまざまな旅行商品造成につながったとみられる。
今季1隻目となる「飛鳥II」(5万142トン)は今月14日に寄港。JTB九州などのチャータークルーズで、新幹線乗車のオプショナルツアーを設けた。函館で一度下船し、新幹線で青森市に渡り、八甲田山の雪の回廊などを見学し、同市内に宿泊。15日は陸路を移動し、岩手県大船渡市で再び乗船し、クルーズを続ける内容という。
「ダイヤモンド・プリンセス」(11万6000トン)で国内発着クルーズを展開するプリンセス・クルーズなどは、神戸発着の「北海道周遊と知床クルージング・サハリン」(5月30日~6月10日)のうち、最初の寄港地となる函館港で乗船し、青森港で下船する6泊7日の商品を販売した。
寄港地は室蘭、釧路、ロシア・コルサコフなどで、下船後は新幹線を利用する〝函館発着〟のプランだ。新青森からの新幹線料金も含み、1人8万9800円(内側客室)からで、1泊当たりの料金は、神戸発着よりも割安となっている。
一方、クラブツーリズムが扱う「飛鳥II 夏の北海道チャータークルーズ」は、移動手段に客船と新幹線を組み合わせた商品。8月22日に横浜出港後、途中の寄港はなく同24日に函館に到着。下船後に市内観光を楽しみ、同日中に新幹線で東京に戻るコースは、「北海道新幹線開業の話題性もあって、バス5台分(約200人)の申し込みがあった。予定よりも販売が伸びた」(同社)とする。
このほかにも、函館を起点に道内を周遊し、新幹線を利用して東京に向かうコースなどもある。同社は「短期クルーズは客船が初めてのお客様にもお薦めで、昨年は飛鳥IIと北陸新幹線との組み合わせが人気だった。同じ航路を船で戻るより、別の交通手段にも需要がある。今後も客船のチャーターが可能なら同様の商品を展開したい」としている。
函館港を発着港と見なす動きや新幹線との相乗効果が生まれていることについて、市港湾空港振興課は「新幹線開業でクルーズ商品のバリエーションが増えている。市民や新幹線で訪れる観光客が函館港から乗船できる函館発着のケースを増やし、寄港回数増加につなげたい」としている。(今井正一)