6月1日の道南スルメイカ漁解禁まで1カ月を切り、今季の漁模様に注目が集まっている。水産研究・教育機構(横浜市)が4月28日に発表した日本海での漁期前半(5~7月)の長期予報では、来遊量は1994年以降で最も漁獲が少なかった前年並みになると予想。一方、燃油価格が低水準を付け、今季から操業予定のイカ釣りの新規参入者も現れるなど、明るい話題も出ている。
函館のイカ釣り漁船は解禁後、日本海側を北上する群れを追って松前小島付近で操業。津軽海峡内に漁場が形成される7月まで日本海が漁獲の中心だが、漁場が遠いため、近年は円安による漁船の燃油高に悩まされていた。
函館市漁協によると、組合員に販売するA重油価格は1日現在、前月より1・6円上がって1リットル当たり55・8円(税別)。前年同月より17・9円安い。同漁協は「近年にない低い水準。この範囲内なら、心配はいらない。イカの漁獲さえあれば」と願う。
市漁協に21隻、銭亀沢漁協に2隻が所属しており、計23隻が函館港に水揚げする。船の老朽化や船員の高齢化による生産基盤の弱体化が懸念されていたが、市漁協に今季新たに1隻が加わった。水産卸のマルナマ古清商店(函館、古伏脇隆二社長)が出資し3月に設立した「まるなま漁業部」だ。漁船を購入し、出漁準備を進める蛯子清光社長(54)は「高齢化や後継者不足で漁業をする人が減っている。函館の観光資源でもある、いさり火がなくなってしまうのは寂しい。需要のあるイカを捕りに行くしかない」と意気込む。
道総研函館水試の澤村正幸研究主査は「長期予報を見ると、資源量は良くないと考えられる。水温が高めで日本海での群れの北上は早い見込みだが、海域ごとの来遊時期はその時々の水温に左右される」とする。北海道日本海へのスルメイカ来遊予測は、函館水試調査船「金星丸」が今月21~27日に行う調査に基づき、漁期開始前に発表される。(山崎大和)