函館市と函館国際水産・海洋都市推進機構は21、22の両日、青森県むつ市大畑町沖でサケを養殖する「北彩漁業生産組合」を視察する。函館でのサケ養殖の可能性を検討する狙いで、今後、漁業者がサケ養殖事業に取り組む場合の参考にする。市としてサケ養殖の視察は今回が初めてで、漁獲低迷の中でも新たな養殖対象種に活路を見出したい考えだ。
市農林水産部によると、函館から計11人が同組合を訪れ、外海いけすや加工施設を見学し、経営状況について漁業者らと意見交換する。大畑地区は下北半島の津軽海峡に面し、かつてはイカ釣り漁業が盛んな町として知られた。
養殖は1989年に研究会の形で始まり、大型のニジマス(ドナルドソンニジマス)を、外海で育て「海峡サーモン」としてブランド化。生産から加工、販売までの一貫体制を確立し、サケの付加価値を高めている。
同じ津軽海峡でも、函館の沖合は潮の流れが非常に速いと言われており、いけすが耐えられるかや、陸上で一定期間育てるサケの稚魚の採算性なども課題となる。
函館ではマコンブ養殖が盛んだが、他の魚種では椴法華と南茅部地区でホタテ養殖に取り組んでいる漁業者が一部いる。
市が新たな養殖対象種に着目したのは、政府が今月1日、農林水産業・地域の活力創造プランを改訂し、水産政策改革の具体的内容を盛り込んだからだ。厳しい資源管理が求められており「とる漁業」から「育てる漁業」への転換は避けられない。世界的に魚食が増加傾向で、養殖生産量が急激に伸びていることも背景にある。
道内では、水産研究・教育機構北海道区水産研究所(札幌)がベニザケの養殖技術開発を進めており、研究成果の受け皿「根室市ベニザケ養殖推進協議会」が今年度立ち上がった。
同部は「資源管理が厳しくなれば、漁獲圧を低く抑えることが必要で、養殖に目を向ける時代が来る。ゼロベースの発想で挑戦できるか、慎重に見極めたい」としている。(山崎大和)