政府は21日、北海道~岩手県沖の日本海溝・千島海溝沿いでマグニチュード(M)9クラスの地震が起きた際の被害想定を公表した。最悪の場合、道南を含む全道では津波による死者数が13万7000人に上り、東日本大震災での死者・行方不明者数を上回る厳しい推計。9道県全体の死者数は19万9000人。ただ、津波から早期に安全な場所に避難するなど防災対策を講じることで、死者数は8割減らせるとしている。
日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震について、内閣府は昨年4月、浸水想定を公表。鈴木直道知事もメンバーに名を連ねる巨大地震対策検討ワーキンググループが9回の会合を開き、北海道から千葉県にかけての太平洋側と秋田、山形を含む9道県に被害が出ると想定、今回は死者数や建物被害、避難者数などをまとめた。予想される津波の高さは函館市で最大9・5メートルなど。建物は最大約22万棟が全壊し、経済被害額は約31兆3000億円と試算した。
三陸北部沖で起きる日本海溝モデルでは、冬の深夜で早期避難率が低い最悪のケースで道内の死者数は13万7000人。多くの人が就寝中で、積雪や凍結で道路状況も悪く、素早く逃げられないと判断した。道東沖で起きる千島海溝モデルでは、同じ条件で道内の死者数は8万5000人と試算した。
道内の建物被害は、日本海溝モデルで液状化や津波、火災の影響で全壊が11万9000棟、千島海溝モデルで全壊5万5000~5万7000棟と推定。
死亡のリスクが高まる「低体温症要対処者」は道内で1万9000~1万4700人に達する。
道内の避難者は、日本海溝モデル(冬・夕、早期避難率が低い)で1日後に41万3000人、1週間後に26万5000人、1カ月後に26万5000人、千島海溝モデル(同、同)で1日後に25万人、1週間後に16万8000人、1カ月後に15万5000人とした。インフラ被害では、道内の道路被害箇所数が日本海溝モデルで2700カ所、千島海溝モデルで1100カ所に上る。胆振東部地震(2018年9月)では全域停電(ブラックアウト)が起き、市民生活を大混乱に陥れたが、今回は道内での停電率は2~4%と低く抑えられている。
内閣府は「対策を講じれば、被害量は減じることができる」とし、津波からの早期避難に対する住民意識を高め、津波避難ビル・タワーの活用・整備なども求めている。
道は被害想定を受け、道防災会議減災ワーキンググループで市町村別の被害想定を算定し、来年以降公表する予定。(山崎大和)